日韓W杯から17年後の「奇跡」 日本ラグビーの歴史的勝利で一変したエコパの未来
サッカーとの共存共栄、エコパを「ラグビーの聖地」へ
かくして「ラグビー聖地化検討会」が立ち上がる。参加したのは、県とラグビーの県協会、ヤマハ発動機ジュビロ、女子7人制ラグビーのアザレア・スポーツクラブ。「ラグビーW杯のレガシーをどう生かすべきか」「育成年代のラグビー人口を増やすにはどうすればいいか」といった議論を重ねるなか、具体的なアクションも生まれた。
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「まず『競技団体をしっかりしなければ』ということで、県協会が任意団体から一般社団法人になりました。そして昨年6月のリーグワン発足に向けて、ヤマハが『静岡ブルーレヴズ』に改称したんです。企業名とジュビロの名前を外し、静岡を名乗るようになったのは、全県で応援してもらえる存在を目指しているからでしょうね」
ちなみにブルーレヴズは、これまではヤマハスタジアムを本拠地としてきたが、今年3月27日には日本平で、そして4月23日にはエコパでもホームゲームが行われている。また、エコパでは5月14日と15日、女子7人制のラグビー大会(太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2022)も開催された。
とはいえ、サッカーへの対抗意識があるわけではない。県内のラグビーとサッカーは仲が悪いわけでないし、エコパの指定管理者も県のサッカー協会。となれば、サッカーとの共存共栄を図りながら、ラグビーによるエコパの利活用を広げていくことが今後のテーマとなるのは必定。その具体的なプランについて、大石はこう語る。
「エコパはスタジアムを含めて、周辺にピッチが6面ありますから、ポールを立てればそれなりの規模のラグビー大会も誘致できます。実現すれば、それもまた『聖地づくり』の一環になるはずです。エコパがラグビーで盛り上がったのは、確かに偶然ではありました。けれども、せっかくラグビーで静岡が注目されたんですから、この偶然をレガシーとして残していく。それも私たちの役割だと思っています」
2002年のW杯スタジアムが17年後のラグビーW杯で脚光を浴び、さらには新たなラグビーの聖地が「サッカー王国」に生まれようとしている。エコパをめぐって今後、どのようなストーリーが展開されるのか、引き続き注目したい。(文中敬称略)
(宇都宮 徹壱 / Tetsuichi Utsunomiya)