「有料配信でスポーツは先細り」は本当か 参入したAmazonプライム・ビデオが掲げる使命
ファン獲得に課題の有料配信、「Amazon プライム・ビデオ」だからこその使命
スポーツ配信の有料化を巡っては反発も少なくない。「新規ファン獲得チャンスが狭まり、競技の未来が先細りしていく」という声も根強く、一部のスポーツファンからは「ヒール(悪役)」と誤解されることもある。ベースが無料だったのだから、無理もない。
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そうした現状を理解しながら、児玉氏は明かす。
「もちろん、無料視聴で広告モデルが成り立つのであれば、スポーツにとって素晴らしいこと。スポーツはファンがいて成り立ち、同時にファンを育てていかなければいけないコンテンツ。それは正直、無料が適していますが、向いていないものもかなりあります。まずマス向けじゃないと、視聴率が上がらない。特に、ボクシングは試合が3秒で終わるかもしれない競技で、タイムフレームからしても難しさがあります。年末のビッグカード目白押しのようなイベントは別ですが、毎回こうしたイベントをやるのは現実的ではない。一方で、数千円もの(高い)金額をもらってやればビジネス的に成り立っても、ファンは減っていってしまう。なので、有料だけに偏れない難しさもあります」
その中に「Amazon プライム・ビデオ」だからこその使命が2つある。
今回の村田―ゴロフキン戦で興味深いデータがあった。それは、ボクシングに縁遠いとされる女性層の視聴が想定以上に多かったこと。
「こんなに面白いスポーツなんだと初めて知りました」との声が複数届いた。日本のスポーツ専門動画配信サービスからすれば、お手頃な月会費500円。ネット通販の配送特典など複合的なサービスを展開している。ユーザーからすれば「せっかくお金を払っているのだから」という意識も働き、テレビだったら見逃していた層の興味も向く。日本で圧倒的会員数が誇る同社だから実現できる強みだった。
「(Eコマースの)配送があって、音楽があって、ちょっと雑誌も読める。他にも諸々のサービスがあって、月会費500円、年会費4900円というのは、無料から有料という幅の中の凄く良いバランスのメディアになれる。そういう部分でお客様にちょうど良いパートナーとして『Amazon プライム・ビデオ』が選ばれていってほしい」というのが児玉氏が描く未来像。新しい時代のファン開拓に手応えを掴んだ。
そして、もう一つ。総額20億円とも言われた興行が日本で実現したこと。従来の無料配信だったら、日本でこの試合が観られていたかというと疑問符がつく。
「ボクシングなら別のドリームマッチを組むお手伝いができます。何よりもスポーツを支援し、ビジネスとして成り立たせていくことが一番大事。1人でも多くの方に観ていただき、しっかりとライセンスフィーもお支払いする。最後は至ってシンプルで、ファンを作る協力をして、業界としてスポーツ選手の方が潤うようにしていく。当たり前すぎる話ですが、我々としてはそこをしっかりとやっていくしかありません」
楽しみを取り上げるのではなく、ファン・選手の楽しみを創出していく側面がある。見えづらい部分ではあるが、児玉氏は「私たちにできるのは良いバランスの中でファンを育てるお手伝いをさせていただき、選手に還元するお手伝いをさせていただく、ということだけですから」と語る。