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“サッカーに向く性格”はない 海外名将が断言、多様な個性を束ねるのが「監督の役目」

大久保嘉人、鈴木優磨が放つ闘争心

 多様性を認めるというのか。

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 日本的感覚では意外かもしれない。やや好戦的になっただけで、「模範的ではない」と指摘を受ける。暴力的な選手と見られがちだ。

 昨シーズン限りで現役引退した大久保嘉人は、その典型だった。J1史上最多、104枚のイエローカード。「腕白」を越えた「乱暴者」のレッテルを張られたが、危害を加えるようなものはほとんどなく、大概はあり余る闘争心の発露だった。その強い気概のおかげで、彼はJ1で3年連続得点王、歴代最多得点記録を打ち立てたのだ。

 今シーズンでは、鹿島アントラーズの鈴木優磨も、その系統に入るだろうか。開幕のガンバ大阪戦からパトリックの退場劇で「あくどさ」が焦点となったが、やり合ったなかでの結果だった。荒っぽさで集中力を高める、選手としての行動規範に過ぎない。昨シーズンはベルギーリーグで17得点を記録しながら代表に招集されず、「その言動が森保一監督に嫌われている」という“憶測”は気の毒だ。

 一つ言えるのは、反逆的で不良っぽい選手をチームに取り込むのも指導者の裁量ということだ。

「Mala Leche」

 スペイン語で「悪くなった、腐った牛乳」が直訳だが、不機嫌でむすっとした人物の性格を意味している。いわゆるワル。感じは良くないし、ネガティブな空気を内部に振りまくこともある。しかし、その悪さはあり余るパワーの裏返しでもあり、サッカーというコンタクトがある対戦スポーツでは、頼りになる味方にもなるのだ。

 ジョゼ・モウリーニョは、ワルたちの扱いに優れていた。サミュエル・エトー、ズラタン・イブラヒモビッチ、ペペ、アルバロ・アルベロア、ジエゴ・コスタ……いずれも無頼の徒と言えるだろう。その恩恵を得て、FCポルト、チェルシー、インテル、レアル・マドリードといずれのクラブでもビッグタイトルを勝ち取っている。

<正念場で、ワルはしばしば強烈なパワーを生み出す>

 それは一つの真理だ。

 とりわけ、相手のサッカーを徹底的に潰し、カウンター一発で勝利を収めるスタイルでは、無慈悲な戦闘力が必要とされる。敵陣にせよ、自陣にせよ、ペナルティーエリア付近で、試合を決めるプレーをやってのける。ワルの真骨頂だ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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