日本代表の「選手層は厚くない」 トルシエがW杯メンバー選考に持論「弱点になる」
森保監督を評価、オーストラリア戦には「感銘を受けた」
そして本大会に向けたメンバー選考については「チームのベースとなるのが14、15選手であることは分かっているので、多くのチョイスがあるわけではない。私も森保監督と同じ選手を選出するだろう。新たな選手を今から見つけるには少し遅いのもある」と、現状の主力メンバーの招集には異論がない様子だ。
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「(選手選考に関して)自分の感覚的な部分もあるので、どの選手を選ぶかは難しい。哲学が先にくるが、それだけでは十分ではない。(チームの)内部にいて、何が起きているのかを正しく感じ取り、そこから決断していく。外部からは内部と同じ感覚は得られないものだ。
森保監督の選択はロジカルで、よくやっていると思う。予選では結果だけでなく、メディアからの多くのプレッシャーとも戦っていたので、彼にとっては簡単ではなかったはずだ。チームはまとまっているし、特にオーストラリア戦には感銘を受けた。素晴らしい試合だった。選手層が厚くない中で、もし怪我人がいなければ(W杯本大会で)サプライズを提供できるかもしれない。しかし正直に言って、スペイン戦とドイツ戦は大きな挑戦になる。彼らはワールドカップの優勝候補だからだ」
カタールW杯が日本にとって、厳しい戦いになることを否定しなかったトルシエ氏だが、それでも日本サッカーの歴史の扉を開いた1人として、若き才能が世界を再び驚かせることには少なからず期待を抱いている。
「日本人選手は優れた技術に精神性、規律、それに今はフィジカルも兼ね備えている。そして良い教育と規律も持っている。ドイツは日本人選手が成功できるだけでなく、(他国の選手と)異なる態度をチームにもたらせることをよく知っている。ドイツは日本人選手を(欧州で)育てた最初の国であり、その成功からまた新たな道が開け、彼らはどこでもプレーできるようになった。
ワールドカップでの対戦は、ドイツにとっても簡単な試合ではないだろう。日本には6~8人ほど、ドイツでのプレー経験者がいて、それが試合を難しくするはずだ。初戦というのは常に難しいもの。日本はドイツとの対戦で臆することはない」
11月23日に迎えるドイツとのカタールW杯初戦。優勝4回を誇る強豪との一戦で、もし世界を驚かすようなサプライズを起こせれば、20年前の日韓大会と同様、日本サッカー界は歴史的な成果を手にできるかもしれない。
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■フィリップ・トルシエ / Philippe Troussier
1955年3月21日生まれ、フランス・パリ出身。現役時代はDFとしてプレーし、28歳で指導者の道へ。34歳でアフリカに渡り、5か国のクラブや代表チームを指揮し「白い呪術師」の異名を取った。南アフリカ代表を率いた1998年フランスW杯後に日本代表監督に就任。A代表と五輪代表を兼任すると、99年ワールドユース準優勝の“黄金世代”をはじめとした若手の才能を伸ばし、徐々に世代交代を果たした。2000年シドニー五輪はベスト8に終わるも、直後にA代表で臨んだアジアカップで優勝。02年日韓W杯では日本サッカー史上初のベスト16進出を果たした。その後はカタール代表やマルセイユの監督などを経て、近年は中国やベトナムで若手育成のプロジェクトを担った。
(マイケル・チャーチ / Michael Church)