公立中学サッカー部を次々と強化 異色の指揮官が重視する「1対1」と教師目線の信条
学校生活でやるべきことをやれない選手は「信用できない」
2020年11月の高円宮杯第32回全日本ユース(U-15)選手権関東大会に出場した64チーム中、唯一の中体連が南浦和中だった。神立さんは「漢字だけのチーム名は、うちしかなかった」と笑う。
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Jリーグ柏レイソルのFW升掛友護は、公式戦に初先発した3月2日のルヴァンカップ・北海道コンサドーレ札幌戦で2得点。同杯3試合終了時点で3点を挙げている。今季柏U-18から昇格した新人だが、弟の壮梧は南浦和中の司令塔で今春柏U-18に進む。「南中は個人技を重視したチームなので、長所をさらに伸ばせました。武器はドリブルとパスです」と練習で軽やかなドリブルを披露した。
今季最大の目標は3年ぶりの全国中学校大会出場だ。高円宮杯県ユース(U-15)リーグ2部を制し、初の1部昇格も視野に入れる。2部で優勝した一昨年は、コロナ禍で昇降格のない規定に泣かされたからだ。
主将のMF沼尻爽汰は「たくさんのことを教わり、先生のおかげで細かい技術が身に付きました。だんだんと上手くなっていくのを感じる」と感謝し、アタッカーのFW片桐盛も「一番上達したのはドリブルです。南中はドリブルを生かすサッカーなので、そこを徹底的に磨いている」とこだわりを強調した。
強豪の私学ならともかく、公立中学を率いて毎年好チームを編成するのだから大した手腕だ。
大宮南高の田中龍太郎監督は、武南が第60回全国高校選手権で初優勝した時の1年生レギュラーで、神立さんとは朋友の同級生。4月1日付で埼玉県サッカー協会技術委員長に就任予定の習熟した指導者だが、「個を伸ばす着眼点と工夫が凄いし、毎年勝たせるチームに仕上げるのだから立派ですよ。あの指導力には敬意を払います」と評した。
4月で教員生活17年目に入る。サッカー部監督というより、教師であることを強く印象づけたのがこの言葉だ。とても尊い信条ではないか。
「学校生活と部活動は切り離せませんね。古い考え方かもしれないが、学校でやるべきことをやれない選手は、最後は信用できない。僕らは授業から給食から掃除まで接している時間が長い分、いろいろと目につくんですよ。生徒も言いたいことはヤマほどあるでしょうが、この人に言い訳しても無理だから四の五の言わずにやるしかない、って擦り込まれています。こういう積み重ねをしているだけに、学校生活も一生懸命やってきた選手にはいい思いをさせたい、夢を叶えてあげたいですね」
(河野 正 / Tadashi Kawano)