[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

運命を変えた「ナイス」の一声 サッカー元日本代表FWが「無敵になれた」小2の1試合

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はA代表選手にまで上り詰めた3人を例に、少年時代からどこにでも転がっている“きっかけ”を掴む重要性について説いている。

元日本代表・豊田陽平が小学2年生の時に経験したきっかけとは(写真はサガン鳥栖時代)【写真:Getty Images】
元日本代表・豊田陽平が小学2年生の時に経験したきっかけとは(写真はサガン鳥栖時代)【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:豊田陽平が小2で経験したきっかけ

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はA代表選手にまで上り詰めた3人を例に、少年時代からどこにでも転がっている“きっかけ”を掴む重要性について説いている。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 ◇ ◇ ◇

 サッカーは人生の縮図だ。

 きっかけ次第で、すべてが転がり始める。もちろん、そのきっかけが一度ではプロには辿り着かない。しかし複数のきっかけを起こすには、1回目のきっかけが必要だ。

 アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァヒド・ハリルホジッチと3人の監督に日本代表として選ばれたストライカー、豊田陽平(現・ツエーゲン金沢)は小学2年生の時、そのきっかけを経験している。

 石川県小松市に生まれた豊田は、同学年の生徒よりも一回り大きい体だったことで、1学年上の3年生のサッカーチームに所属した。ただ、最初から受け入れられるはずはなかった。上級生たちの妬みを受け、ボールをパンクさせられるなどのいじめを受ける日々を過ごしていた。サッカー自体が嫌いになりそうになった。

 しかし、ある日を境に一変した。

 当時、豊田は「体がでかい」という理由だけでディフェンスをさせられていた。試合中、裏に抜けたボールに対し、とにかく必死に体を投げ出し、スライディングタックルでインターセプトした時のことだった。

「ナイス!」

 いじめっ子の上級生たちから、プレーを称える声が自然発生的にいくつも上がった。ピッチに立てば味方同士。チームのために尽くすプレーは、周りに掛け値なしに認められた。

「褒められた時の風景は、今でも鮮明に覚えていますね。紫のユニフォームを着ていたんですが、砂まみれになって。でも、どんどん『いいぞ』とか声がかかるから嬉しくなって、無敵になれた気がしました」

 豊田はそう振り返っている。チームのために体を張って献身し、味方に必要とされ、気分が乗る。それは、忘れられない原風景となった。

1 2 3

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集