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パラ競技に広まるアスリート雇用 証券会社に勤める車いすラグビー元日本代表の願い

2013年の東京パラ開催決定と障害者雇用率の引き上げでアスリート雇用が増加

 東京パラリンピックに出場した車いすラグビー日本代表12人のうち、実に11人が一般企業にアスリート雇用された選手だった。他のパラスポーツを見てもアスリート雇用で企業に所属する選手は多く、スポーツに専念しやすい環境が広がっている。

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「パラスポーツでアスリート雇用が広がったのは東京パラリンピックと、その開催が決まった2013年に障害者雇用率が1.8%から2.0%に引き上げられたことなどが要因です。雇用すべき障害者の数が増えた企業が、打開策の1つとしてパラアスリートの雇用に積極的になりました。どのくらいスポーツに専念するか、どのくらい社業にあたるか、雇用条件は企業によって様々です。スポーツで自分に価値をつけて雇用を勝ち取る環境作りが進んだおかげで、パラアスリートが未来を描きやすくなり、夢を持ちやすくなったことは良かったと思います」

 アスリートとして競技に専念しやすい環境が整う一方、解決しなければならない問題点も見えてきた。その1つがアスリートを引退した後のキャリア、つまりセカンドキャリアの問題だ。すでに現役を退いている三阪さんは、自身の場合、雇用主であるバークレイズ証券と理想的な関係が築けたと話す。

「バークレイズ証券の場合、社内業務とスポーツ、障害の認知拡大活動をパラアスリートが携わる業務の3本柱とし、引退が近づく中でスポーツ以外の業務の割合を上げても問題ないという方向性を示してくれました。これは非常に有難かったと思います。現役選手の時も社内業務を任せてもらいましたが、実際のところ、上司や同僚は週2日の勤務である僕に仕事を任せづらい部分もあったと思います。なので、アスリート雇用した選手にフルタイムでスポーツに専念することを許している企業も多くあります。

 ただ、これでは現役を辞める時に社内業務をするイメージがつきにくかったり、何をしたいのか、何ができるのかを考えるきっかけも得られません。幸い僕は、折に触れてキャリアトランジションについて会社と相談し、話し合う機会がありました。企業とアスリートが互いに意見を出し合える関係を作ることは大切だと思います」

 アスリートとしてキャリアは現役引退で大きな区切りを迎えるが、いち社会人としてのキャリアは引退後も長く続くもの。パラスポーツ界がアスリート雇用という制度を上手く生かすためには、アスリートと企業双方が社会人としてのキャリア形成も意識していくことがカギとなりそうだ。

「単に雇用して『どんどんスポーツをしてください』と放置するのは、本当の意味での雇用だとは思いません。企業は自社の実績を上げる人間として育てると同時に、社会で活躍できる人間を育てる責務も担っていると思うんです。アスリートもスポーツに専念していいという立場に胡座を掻くだけではモンスターアスリートになってしまう。自分がスポーツを通じて得た経験や価値、魅力を、どうやったら引退後に生かすことができるのか考えた方がいい。現役中は考える暇がないというアスリートもいますが、1日5分や10分、考える時間はありますから(笑)。アスリート委員会の中でもアスリートの教育はもちろん、アスリート雇用に取り組む企業への教育やアドバイスも必要なのではないかと話しています」

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