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アジアV3逃した熊谷紗希が繰り返した「危機感」 世界の頂に立った主将が知る日本の課題

世界の頂点を目指す上でなでしこジャパンに足りないもの

 熊谷自身、久々にアジアのチームとの対戦だった。大会に入るまでは、アジアのレベルが「どんな感じなのか、正直分からなかった」という。それでもオーストラリアだけは東京五輪でベスト4という成績を残し、W杯の母国開催を来年に控えていることから「一番難しい相手になる」ということは漠然と考えていた。だからこそ優勝を目指して試合を進めるなかで、「これは逆に勝たないといけないレベルなんじゃないか」と感じていた。

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「もどかしいというか、逆に自分に何ができるのかを考えていました。チーム全体に自分から何かを言うことは、今大会はしなかったですが、それでも私は勝ちたいので、プレーのなかでその都度、気づいたところをチームメートに伝えて、たくさんの要求をしていました。

 それにアジアのレベルと世界のレベルが全然違うことは、みんなにずっと伝えています。それでも海外に出て体感して、実際に世界と戦ってみないと分からないところは絶対にあって。自分自身、普段から海外の選手を相手に戦うことの意味をすごく感じています。10年海外でプレーしてきましたが、今でもヨーロッパの第一線で戦えているし、代表でも戦っている。自分がやってきたことはそんなに間違いじゃなかったなと思っていますし、若い選手たちに示すこともできていると思うのですが、もう少し示し続けていかないといけないのかなとも思っています」

 なでしこジャパンは今大会優勝した中国との準決勝で延長、PKの末に敗戦。植木理子のゴールで2度のリードを奪ったにもかかわらず、守り切ることができなかった。守備陣の一人として熊谷は「責めてもらったほうがいい」と責任を感じている。

「サッカーにおいて、絶対に守らなければいけない時間帯での失点でした。後半立ち上がり、もちろん1点ビハインドの中国が攻めに来るというのは分かり切っていたし、延長戦で、もう一度リードできていた状況での残りのラスト数分、絶対に守り切らないといけない状況でそれができなかった。敗因は、本当にそれに尽きると思います。

 1失点目も、私自身が前に出なくてもいいところで出てしまった。何か、一瞬の隙じゃないですけど、チームとして本当に締めないといけない時間帯だったと思います。また後半の守り切る状況では、チームとしての戦い方をもう少し持っていたかった。高さに対応するために5バックにすることは理解していたが、チームとしての時間帯での戦い方、どうやって守り切るのか、というところに関してはもう少しチームとしての明確なやり方や意図が必要だったと思います。ただ、チャンスがあったなかで2点を取って、それを守り切れなかった守備陣の責任もあります」

 目標だったアジアの頂点に立つことはできなかった。それが今のなでしこジャパンの実力なのかもしれない。だが、光を放った選手もいる。「植木は相手に対して怖さを出せる選手だということをアジアのなかでも証明できたと思うし、他にも個の特徴を出せた選手はたくさんいた」と熊谷はいう。

「個の特徴があるからこそ、そこにコンビネーションだったり、チームとしての力だったりがプラスαで加わってくるんだと思う」

 来年7月に開幕するW杯まで、あと1年と5か月。もう一度、世界の頂点に立つためになでしこジャパンに必要なものは何なのだろうか。改めて熊谷に聞いてみた。

「チームとして活動できる期間は本当に限られていますし、何カ月もキャンプができるわけでもありません。課題だらけですけど、本当にチームの力になるのは個の力に尽きるのかなと思います。一人ひとりが戦える能力を上げるしかない。代表の活動以外のところで、個で何ができるか。どれだけ一人ひとりが世界を意識して、一日一日を過ごせるか。そこが一番重要になってくるんじゃないかと、私は思っています」

 悔しさがまだ滲む言葉の一つひとつを絞り出しながら、何度も繰り返し、語気を強めた「危機感」。世界の頂点を味わった者だけが知る、世界との差。それを埋められないもどかしさが、熊谷をさらに強くする。すべては再び、あの場所へとたどり着くために。

(THE ANSWER編集部)

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