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10代で第一線を退くフィギュアの年齢規定問題 29歳まで現役生活を貫いた鈴木明子の警鐘

鈴木明子さんはフィギュア界にあるジャンプ偏重で起こる健康問題にも言及した【写真:松橋晶子】
鈴木明子さんはフィギュア界にあるジャンプ偏重で起こる健康問題にも言及した【写真:松橋晶子】

フィギュア界にあるジャンプ偏重「本来の良さが失われつつある」

 一方で、シニアの年齢を引き上げた場合の問題もあります。

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 シニア以下を「ジュニア」とした場合、ジュニアの選手の方がシニアの選手より点数が高いことも起こり得ます。ジュニアで選手としてピークを迎え、シニアに到達できない選手も出るかもしれない。引き上げるなら、「シニア」のカテゴリーが、ジュニアを経た意味があるものにしないといけない。「できなくなってきた人たちがシニアにいる」ではいけません。ただ、それをクリアできれば、指導も変わると思います。

 もし、シニアの年齢が引き上げられ、競技寿命の長い選手を育てるとなると、基礎の部分もすごく大切になります。ジャンプのピークは筋力的・体力的な影響もありますが、スケーティングの技術は滑れば滑るほど、美しくなっていく。まさに、熟成される感じがあると思います。ただし、今はそのバランスがかなりジャンプに比重が乗っています。

 どうしても、難しいジャンプを跳べれば得点が高くなりやすく、とにかく「早く跳べるように」という方針。体が大きくならないうちにジャンプを作り上げようとするから、教える側も跳ぶ側も焦る。「この年齢までに、このジャンプができなかったら選手として終わり」という考えもあるかもしれません。そうなると「もう、この競技は諦めなければいけない」と選手に思われるのが、すごくつらいことです。

 そして、ジャンプ偏重で選手にとって最も大きな問題となるのが、健康障害です。例えば、摂食障害。私も19歳の時に患い、48キロだった体重が32キロに。体重が軽い方が有利なジャンプ。過去に、多くの海外スケーターも摂食障害を告白しています(※2)。また、過度に追い込むことで、私はシーズン中は無月経になりました。そうしたことは競技人生のみならず、引退後の健康に関わってくることです。

 それでも、私は29歳まで現役を続けることができました。ジャンプも一番状態が良かったのが26歳くらいから。もちろん競技のレベルも違いますが、選手の伸びる時期は、人それぞれであるとも思います。

 フィギュアスケートは今、本来の良さがどこか失われつつあると感じます。採点もジャンプに重きが置かれた現状から、バランスが取れてくることが望ましい。ジャンプの難易度を求めることは、スポーツとしては正しい一方で、体を酷使すると一向に怪我は減らず、選手寿命も短くなってしまう。結局はどれを求めるかだと思います。競技人生が短くなっても、この一瞬で世界最高レベルのものが欲しいと思うのか。

 私は、選手たちはそもそもフィギュアスケートが好きだからこそ、いろんなものを長く表現してみたい、スポーツとしてこのフィギュアスケートを楽しみたいというのが、本来のあり方だと思っています。

 私自身、単純にスケートが好きで始め、その気持ちがずっと続いていたから、やり切ることができ、競技に未練なく終わることができました。これは、本当に幸せなこと。好きなことを見つけ、一生懸命やり、最後までやり切ることは、引退後の人生においてもつながってくる。もし、本当は好きだったのに諦めなければいけない競技であると、どうなるでしょうか? そこにすごく大きな差が生まれます。

「スケートが好き」という気持ちを持ったまま終えられた人は、次の世代にもスケートを好きになってもらいたいという想いにつながっていく。これは競技の普及・発展という点にも関わることだと思います。

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鈴木 明子

THE ANSWERスペシャリスト プロフィギュアスケーター

1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。

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