スノボの天才少女から17歳メダリストへ 村瀬心椛に「僕が恵まれた」とコーチが言う才能
初めて見た時から「自分の体を使う上手さが凄い」
そんな阪西コーチが、村瀬に初めて会ったのは10年以上前。その時はコーチとしてではなく、「僕らがスノーボードの映像を撮っていて、その試写会のようなお披露目する会があったのですが、それを観に来てくれていたんです」と振り返る。2013年秋にジャンプ台やジブを備えたオフシーズン用の練習施設「立山KINGS」(当時の名称は富山KINGS)が完成すると、阪西コーチはそこを拠点に活動。「オープン当初から立山KINGSでレッスンをやっていて、そこに参加してくれました」と、スノーボードに乗った当時まだ小学生の村瀬を初めて見た。
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「やっぱり最初から上手かったですね。年齢の割には、すごく体が動かせる感じで」
“天才少女”の才能に触れた阪西コーチは、そこから約8年、指導を続けていく。多くのトップ選手をコーチングしてきたなかで、村瀬が優れた点はどこにあるのか。そう問うと、「自分の体を使う上手さみたいなのが基本的に凄い」と称賛する。
「伝えたことを正確に、そのまま表現できるというか。『こうやってみたら?』と言ったら、その動きがそのままできる。イメージしていることを、そのままできるというのは、普通はなかなか難しいじゃないですか。でも、それができる。運動神経が良い子というのは、そういう感じなんだろうなと」
教えるたびに難度の高い技を覚え、精度も向上させていく。普段の練習から「驚かされることが、結構よくあった。ありすぎてよく覚えていないくらい」という日々を過ごすなかで、村瀬は2018年5月にノルウェーのオスロで開催されたXゲームの女子ビッグエアで、13歳にして初優勝の快挙を達成。一気に世界トップレベルの選手へと駆け上がっていった。
日本代表チームで活動し、世界を転戦する際にも、阪西コーチは日本から村瀬にアドバイスを送ってきた。今回の北京五輪でも、練習後などに連絡があった際には、「ちょっとした技の修正、上手くいかないところがあったら、ここをこうしたらいいんじゃないかと話したり、本番でどの技をどの順番でやるのがいいかなどを考えたり、あくまでも第三者的にアドバイスしていた」という。
ビッグエア決勝に向けては、「勝つにはトゥエルブが必要」と本人と話しており、その言葉どおり3回目に大技のバックサイドダブルコーク1260(斜め軸に縦2回転、横3回転半)に挑んだが、「練習では何本も決めていたらしいんです。でも本番ではちょっと風が吹いたり、バックサイド側のラインというか、滑るところが少し滑らなかったみたいで、スピードが出なかったみたいです」と惜しくも成功とはならなかった。