「被写体・羽生結弦」という魔力 北京五輪で撮影した海外写真家が感じるカリスマ性
ベテランフォトグラファーが考えるフィギュアスケートの魅力
テニス4大大会や北米4大スポーツ(NFL、NBA、MLB、NHL)、サッカー、陸上、スキー、ヨット……。幅広いジャンルのスポーツを撮影してきたが、こだわりを持って撮り続けているのがフィギュアスケートだ。他のスポーツと一線を画するフィギュアスケートの魅力とは、どんな点にあるのだろうか。
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「フィギュアスケートは時代の変化に合わせ、その姿がまったく変わっていくから面白い。トップスケーターの入れ替わりが早いし、技の精度や難度もどんどん上がる。競技そのものが進化し、よりよいものに発展し続けている点に大きな興味を引かれるんだ。同じルーティンを演じても2度と同じ出来映えになることはないし、新しい選手が現れれば新しい個性が生まれる。もちろん、私がフィギュアスケートの盛んな米国に生まれ育ったことも、フィギュアスケートを撮り続ける理由の一つかもしれない。次から次へとレベルの高い選手が誕生しているから」
フィギュアスケートを撮影する時、何よりも大切なのは辛抱強さだ。大会は朝から晩までかかる長丁場。いい写真を撮るためには集中力を保たなければいけない。事前の下調べも欠かせない。大会の注目選手は誰で、何が話題を呼んでいるのか。全ての要素を加味した上で機材を整え、舞台となるスケートリンクへ向かう。
「ベストショットの撮影に必要なのは、適切な機材と辛抱強さ、そしてタイミングだね」
一度でも見た経験のあるプログラムであれば、タイミングは合わせやすい。例えば、チェンが北京で演じたプログラムは昨年10月からスケートアメリカ、スケートカナダ、全米選手権と3大会で撮影。「音楽を聴けば彼がどのタイミングでどんな動きをするのか頭に入っていたので、とても撮影しやすかった」。一方、コロナ禍の影響により、北京で五輪3連覇を目指した羽生はおよそ2年も撮影する機会がなく、「難しさを感じる部分もあった」と明かす。そのギャップを埋めようと曲に合わせて行う公式練習では、カメラで羽生を追い続けた。
本番で羽生は大技・4回転アクセルに挑戦し、公式戦で初認定を受けた。ファインダーを覗く時は、プログラム終了まで撮り逃しがないように集中力を高めているというマシューさん。4回転アクセルを跳んだ瞬間、「何か凄いことをやったな」という想いが頭をかすめたが、レンズはすでに次の瞬間を追っていた。3大会連続の金メダルには届かなかったが、羽生の挑戦はしっかりカメラで記録した。