4回転も3回転半も跳ばない坂本花織 最強ロシアの牙城を崩す“誰も真似できない武器”
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#73 「五輪に立つ者たちの肖像」坂本花織
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。
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女子シングルは15日にショートプログラム(SP)、17日にフリーが行われる。ロシア勢の表彰台独占も予想されるなか、日本から出場する3選手の中で最もメダルに近い存在と言えるのが、昨年12月の全日本選手権で優勝した坂本花織(シスメックス)だろう。北京五輪の団体戦にも出場し、7日に行われた女子フリーの演技では148.66点のシーズンベストを出して2位。団体戦で日本初となるメダル獲得に貢献した。
いよいよ迎える女子シングルで、日本人選手として2010年バンクーバー五輪で銀メダルに輝いた浅田真央以来、3大会ぶりに表彰台に立つことはできるのか。ロシア勢に挑む坂本の姿を追った。(文=辛 仁夏)
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北京五輪の女子シングルは、近年にないほどハイレベルな争いが繰り広げられ、その渦に巻き込まれる全日本女王の坂本花織ら日本女子3選手は厳しい戦いを強いられそうだ。
今季のロシア勢は、金メダル最有力候補で15歳のカミラ・ワリエワをはじめ、他の2人の17歳はいずれも4回転や3回転アクセルの大技をプログラムの演技構成に組み込んで、高得点を叩き出してきた。特にワリエワは、歴代世界最高得点を塗り替える異次元の強さを武器に五輪の初舞台に立ち、戦前の下馬評ではロシア勢の表彰台独占が濃厚だと言われているほどだ。
この強敵たちを相手にメダル争いをする坂本には、4回転と3回転アクセルはない。それでも大技に代わる武器をコツコツと磨き上げてきた平昌五輪からの4年間だった。
その武器が遺憾なく発揮された今季は、3年ぶりに全日本女王に返り咲いて、2大会連続五輪出場を果たした21歳が、北京五輪でロシア勢にどう勝負を挑むのか。それは、スケーティングスピードと演技の完成度を高め、ジャンプやステップなどのGOE(出来栄え点)加点をいかに稼ぐかに懸かってくることは間違いない。大技を組み込む選手たちに比べると明らかに基礎点は低いが、GOE加点での勝負に活路を見出し、なおかつ、ミスのない演技を披露していかなければならない。4年前から格段に演技の質や安定感が向上して、演技構成点も着実に伸び、トップスケーターに成長したと誰もが認めるところだ。