スノボ中継に映る「YONEX」の文字 戸塚優斗が使う「唯一無二」国産ボードの秘密
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載する。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#58 ヨネックス開発担当者に聞くボード開発の裏側
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北京五輪スノーボード・ハーフパイプ男子が11日に行われ、20歳の戸塚優斗(ヨネックス)は10位だった。昨季の世界選手権王者を足もとで支えてきたのが、国産メーカー「ヨネックス」のボードだ。国際試合では外国メーカーの板を使う選手が多数を占めるなか、戸塚はヨネックスの板一筋で戦ってきた。ヨネックス株式会社製品開発部の八重樫洋和さんに、板の秘密を聞いた。(取材・文=水沼 一夫)
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トリックをする時に鮮やかに回転した「YONEX」の文字。戸塚は国際大会では、日本勢以外では珍しい国産メーカーの板でここまで上り詰めてきた。
ヨネックスのボード開発を担当する八重樫さんが「唯一無二」と自信を込めるのが戸塚の板だ。
八重樫さんは戸塚がまだ8歳の頃に出会い、それ以来、12年にわたってマテリアルの担当をしている。コロナ禍以前は国内外の大会にも帯同しており、戸塚のことを知り尽くすパートナーだ。
北京五輪で使用したボードは「REV」というモデル。戸塚が中学時代から愛用しており、現在に至るまで数回のアップデートで性能を微調整している。五輪より使用した最新モデルでは、ボードのノーズ(先頭)とテール(後方)を10%軽量化。さらに反発力を補うため、特殊なカーボンを採用した。
アップデートの狙いについて、八重樫さんは「ライバル選手も含めてどんどん技が進化している。例えば、トリプルコーク(1440=斜め軸に縦3回転、横4回転)をしようとする時に、従来の技よりもさらに大きい遠心負荷が選手にかかってきます。その技を優斗が完成させるために、用具としてのアプローチで、何かサポートしてあげられることはないかということで提案しました」と明かす。
板を回した時に生じるスイングウエイトは3%の軽量化。それでも遠心負荷は軽減され、「わずか数%の差が乗り手に影響する」との判断があった。早くから北京五輪のメダルの色を決めると言われたトリプルコーク。戸塚も昨年練習で成功し、大きな武器を手に入れたが、その裏にはメーカー側の努力もあった。