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羽生結弦、悲壮感なき4年間の終幕 4回転アクセル初認定が「五輪」となった歴史的意義

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。注目競技の一つ、フィギュアスケートは「フィギュアを好きな人はもっと好きに、フィギュアを知らない人は初めて好きになる17日間」をコンセプトに総力特集し、競技の“今”を伝え、競技の“これから”につなげる。

フィギュア男子フリーで4位入賞した羽生結弦【写真:AP】
フィギュア男子フリーで4位入賞した羽生結弦【写真:AP】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#51 フリーの演技に見た羽生結弦の心意気

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 北京五輪フィギュアスケートの男子フリーが10日に行われ、五輪3連覇を目指した羽生結弦は、ショートプログラム(SP)8位から順位を上げたものの4位に終わった。“五輪王者”の称号を手放す悔しい結果になったものの、試合後の表情にはやり切った想いも垣間見えた。前人未到の「4回転アクセル」を成功させることはできなかったが、五輪という大舞台でジャンプの種類として初認定。その挑戦が、フィギュアの歴史を動かしたことは間違いない。(文=辛 仁夏)

 ◇ ◇ ◇

 五輪連覇の羽生結弦、世界選手権を3連覇中のネイサン・チェン、平昌五輪銀メダリストの宇野昌磨、そしてユース五輪王者で世界選手権銀メダルの鍵山優真。北京五輪フィギュアスケート男子シングルでメダル争いを繰り広げたこの4選手が、それぞれが目指した演技で凛々しい戦いを見せてくれた。

 追う者、追われる者、“忘れ物”を取り返しに来た者、究極にチャレンジした者、次世代のホープとしてアピールした者など、いろいろな役どころを持った選手たちが戦い抜いた今回の北京五輪男子フリーは、合計332.60点で金メダルに輝いたチェンや、合計310.05点の自己ベストを更新して銀メダルを獲得した鍵山、3位となり2大会連続のメダルを手にした宇野ら次世代が活躍を見せ、未来に向けた世代交代のバトンがしっかりと繋がった清々しい結果に終わったと言えないだろうか。

 94年ぶりの五輪3連覇を期待されながら総合4位に終わった羽生だったが、五輪王者が目指した視線の先には、五輪タイトルよりも前人未踏の4回転アクセルの成功があった。首位と18点以上の点差がついたSP8位から逆転優勝を目指すなら、間違いなく、まだ完成できていない成功率も低い4回転アクセルを跳ばずに、演技の完成度が上がるジャンプ構成で戦う選択をすべきところだ。

 だが、4年前の平昌五輪で2個目の金メダルを手にした直後に、競技人生最大の目標として4回転アクセルを跳ぶことを掲げて、この4年間、ただひたすらにこの超大技ジャンプの習得に励んできた羽生にとっては、必要不可欠なジャンプであり、自分自身を鼓舞するアイテムだった。

 だからこそ、勝負がかかった最後の最後でも、五輪という最高の舞台だからこそ、4回転アクセルを演技構成から外さずに戦いを全うして負けた。SPで氷上の穴にエッジがはまる不運にも見舞われたが、羽生にとって3度目の五輪は、自身も認める次世代を背負うチェンに主役の座を明け渡す五輪であり、その新五輪王者や後輩たちにしっかりとバトンを繋げる役目を果たした旧王者の心意気を感じた戦いでもあったに違いない。

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