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小林陵侑と葛西紀明の師弟愛 高3でスカウト、どん底で初めて授けた「葛西メソッド」

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。今回は北京五輪のノルディックスキー・ジャンプ男子個人ノーマルヒルで金メダルを獲得した小林陵侑(土屋ホーム)と、同じ所属先で選手兼任監督を務める“レジェンド”葛西紀明(土屋ホーム)の師弟物語だ。

金メダルを獲得した小林陵侑(左)が葛西紀明から伝授された“葛西メソッド”とは【写真:小林幸帆】
金メダルを獲得した小林陵侑(左)が葛西紀明から伝授された“葛西メソッド”とは【写真:小林幸帆】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#24 金メダルの小林陵侑と葛西紀明の師弟愛

「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載。今回は北京五輪のノルディックスキー・ジャンプ男子個人ノーマルヒルで金メダルを獲得した小林陵侑(土屋ホーム)と、同じ所属先で選手兼任監督を務める“レジェンド”葛西紀明(土屋ホーム)の師弟物語だ。

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 小林陵はノーマルヒルの予選を4位で通過すると、迎えた6日の決勝で1本目に104.5メートルの大ジャンプを見せ、145.4点でトップに立つ。そして2本目も99.5メートルを飛び合計275.0点とし、ジャンプ個人では日本人として1998年長野五輪の船木和喜以来、24年ぶりの金メダルを獲得した。そんな日本ジャンプ界のエースの才能をいち早く見抜き、支えてきたのが冬季五輪に史上最多8回出場している葛西だ。小林陵がスランプに陥った際には、的確なアドバイスを送り復調をサポート。そこで伝授された“葛西メソッド”が、ワールドカップ総合優勝、そして北京五輪金メダルの支えになった。(取材・文=小林 幸帆)

 ◇ ◇ ◇

 小林陵侑は2018-19シーズンのノルディックスキー・ジャンプ男子のワールドカップ(W杯)で、日本勢初の総合王者となった。日本人選手として歴代1位となるW杯通算26勝は、ジャンプ男子全体でも歴代8位だ。すでに歴史に名前を残す名ジャンパーの1人となった小林陵の才能をいち早く見抜いていたのが、現在の所属先である土屋ホームで選手兼任監督を務める葛西紀明だ。小林陵を見て「W杯で優勝できる選手」と見込み、高校3年生の時にスカウトしている。

 小林陵のW杯初優勝は、2018年平昌五輪の翌シーズンの開幕2戦目。この試合に出場していた葛西は教え子の初勝利を見届けると、「遅いくらい。もっと早くから活躍すると思っていたから」と話し、「五輪シーズンに(W杯で)勝つと思っていたし、平昌でもメダルが獲れるんじゃないかと思っていたから」と続けた。小林陵の平昌五輪はノーマルヒル7位、ラージヒル10位。ブレイクする前にメダルが獲れると評価していた理由を改めて聞くと、平昌五輪前に「総合優勝したシーズンのようなジャンプが完成しかけていた」という答えが返ってきた。

 2017年夏、葛西は小林陵に「(踏み切りで)スリップしない飛び方」を教えた。葛西自身もこのスリップ癖には悩まされ続けているが、踏み切りでパワーをロスなく伝えるためにはスリップせずに立ち上がらなければならない。小林陵はアドバイスするとすぐにものにし、葛西も「飲み込みが早い」と感心したというが、勝てるジャンプとして完成するには1年待たなければならなかった。だから「遅かった」。

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