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“音”の感覚にも優れる羽生結弦 フィギュア音響のプロが「稀有な存在」と感じる魅力

2009年からフィギュアスケートの大会運営に携わる音響技術者の重田克美さん【写真:坂本ようこ】
2009年からフィギュアスケートの大会運営に携わる音響技術者の重田克美さん【写真:坂本ようこ】

プロから見て音楽性に優れる選手は?

 フィギュアスケートの音響を担当する以前は、スタジオの録音エンジニアとしてヤマハの音楽教材などを手掛けていた重田さん。スポーツが好きで、フィギュアスケートもよくTVで観戦していたという。社内にフィギュアスケートに関わる部署があると知り、「足を踏み入れてみたい」と自ら手を上げた。

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「今までとは全く違う世界ですが、関わりながらどんどん好きになっていきました」

 今では「仕事を離れても、この世界は見ていたい」と話すほど、すっかり魅了されている。

「音楽を表現するスポーツはいくつかありますが、フィギュアスケートって凄いと思いませんか?」と重田さんの声が弾む。

「(シングルの選手であれば)30メートル×60メートルの舞台を、たった1人が独占しているんですよ。多い時には1万人以上の人が注目している。そのなかで演技をして観客を引き込むというのは、他にはないスポーツですよね。実際に現場に入って、『これって、改めて凄いことだな』と実感しました。そういう意味で、やはり注目に値するスポーツだと思います」

 最後に、長く音楽の世界に身を置く音のプロにぜひ聞いてみたいことがあった。音に対する感覚が優れていると感じるフィギュアスケーターとは――。

「現役のトップ選手の中では羽生(結弦)さんは一番だとは思っています。羽生さんにはつなぎという概念がほとんどないんですね。エレメントとエレメントの間がダンスの一部になっている。いわゆる予備動作が見られない。そこも含めて演技として表現しているのを感じます。それに加えて、一つひとつのポーズが指先まで考えられている。稀有な存在だと思います」と重田さんは絶賛する。

 さらにもう1人、昔から印象に残っている選手として名前を出したのが鈴木明子さんだ。

「羽生さんとは方向性が違うかもしれませんが、芸術性という意味で惹きつけられるものを当時感じていました。鈴木明子さんは氷の上で滑ることができる喜びが表現されている演技が多かったと個人的には思っていて、そこに惹きつけられました」

 北京五輪ではどんな奇跡の瞬間が生まれ、私たちを魅了してくれるだろうか。

【私がフィギュアスケートを愛する理由】

「フィギュアスケートというスポーツに関わっていると、時として奇跡を目の当たりにする瞬間があります。選手がこの瞬間に、この大会で何かが変わったとか、あれだけ頑張ってきたからここで上手くいったとか、そうした奇跡が目の前で起こる。それぞれの選手が頑張り、その輝きを見られるのがフィギュアの大会に携わっていて一番良かったと思える瞬間。仕事を離れたとしても、この世界は見ていきたいと思います」(音響技術者・重田克美さん)

 ※「THE ANSWER」では北京五輪期間中、取材に協力いただいた皆さんに「私がフィギュアスケートを愛する理由」を聞き、競技の魅力を発信しています。

(山田 智子 / Tomoko Yamada)

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重田克美

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス音響技術者 
音響技術者としてイベントやスポーツ現場を担当すると、2009年に長野のビッグハットで行われたNHK杯で初めてフィギュアスケートの大会運営に携わる。その後、本格的に担当するようになり、現在はフィギュア音響チームを統括するリーダーに。国内の主要大会をはじめ、世界選手権など多くの国際大会も担当している。

山田 智子

愛知県名古屋市生まれ。公益財団法人日本サッカー協会に勤務し、2011 FIFA女子ワールドカップにも帯同。その後、フリーランスのスポーツライターに転身し、東海地方を中心に、サッカー、バスケットボール、フィギュアスケートなどを題材にしたインタビュー記事の執筆を行う。

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