愛される天然キャラ、モーグル堀島行真の素顔 大学の恩師が明かした“退学危機”の秘話
インタビューの受け答えも「格段に良くなった」
直線的でありながら、天然なキャラクターも堀島が愛される理由と、來田さんは明かす。
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「なんとなく天然なところがある。真面目に答えているのに『ん? その返事か?』っていう時がある。もともと全く攻撃性がないでしょ? 誰かにケンケンするとかとんがって歩いてみるとか、『俺はモーグル界で1位2位を争う人間だ』とか、そんなことは彼には何もない。それは素晴らしいことだと思っています。あの行真さんなのに……っていうぐらい天然な感じのところが、特殊なキャラクターだと思いますね」
近年トップアスリートは、小さい頃からプロのマネジメント会社と契約する選手が多い。メディアの取材をコントロールし、CM出演やスポンサー獲得なども進める。だが、長年五輪を研究してきた來田さんは、堀島が成人するまでマネジメント会社との契約を避けるよう助言した。
「商品化してしまう。それは、本来のオリンピアンの姿じゃないと思う。自分自身が何者かっていうことが初めて商品価値になっていくのであって、商品として最初に売り出されたものに値段がついていくわけじゃないんだと思うんですよね。彼にはそういうアスリートになってほしかった」
堀島も教えに従い、“商品化しない”オリンピアンの道を歩んだ。取材に対しても自ら考えて対応。「インタビューの受け答えが格段に良くなった」と來田さんは目を細めた。
迎えた北京五輪では予選1回目で決勝に進めず、予選2回目に回った。“五輪の魔物”にのまれそうになったが、崖っぷちから這い上がり、日本勢唯一の決勝3回目進出。最後も持てる力を出して、表彰台を確保する意地を見せた。回り道しても決して諦めない、堀島らしい滑りだった。
(水沼 一夫 / Kazuo Mizunuma)