間違いが許されないフィギュア音響技術者 「音が空気になる」舞台を求める仕事の矜持
主役のパフォーマンスを最大限に高める
重田さんはフィギュアスケートの他に、トライアスロンなどのスポーツ競技大会やコンサートの音響にも携わっている。一見全く異なる仕事のように見えるが、「ステージ上のパフォーマーを氷上に置き換えれば考え方は同じです。主役であるアスリートやミュージシャンを邪魔せず、音響的にどういった支援ができるのかということを一番に考えています」と話す。
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「コンサートに観客として行く場合は客席に届く音を聞きますが、実はステージモニターというミュージシャンをサポートする音響もあるんです。ミュージシャンがパフォーマンスする上で、他の楽器がどう聞こえていたらしっかりとパフォーマンスできるのか。聴衆からのフィードバックをどう伝えていったらいいのか。パフォーマンスを最大限に高めるための音響スタッフもいるんですね。細かい部分は違いますが、パフォーマーのために何ができるのか考えるというところでは、フィギュアもコンサートも全部一緒なんです」
コンピュータに取り込んだ各選手の音源は音量などを調整したのち、公式練習で本番用の音色を決め込んでいく。
「音響ブースはリンクのすぐ横にあるので、音を出して選手がどう感じて滑っているのか、表情を見ることができます。多くはないですが、前日の練習で選手から『音量を上げてほしい』などの要望をいただくこともありますので、それに応じて最終調整をします。最近はおかげさまでそういう要望も少なくなり、安心してお任せいただけるようになってきています」
このような丁寧な“下ごしらえ”を積み重ね、本番で選手が安心して演技に集中できる“空気”を作り上げている。
(7日掲載の後編に続く)
(山田 智子 / Tomoko Yamada)