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フィギュア界にかつてあった“4回転論争” ひたすらに理想を求めた高橋大輔の銅メダル

4回転ジャンプを回避したら「自分に負けたことになる」

「初めから回避という選択はなかったですね。まずは自分の理想の演技をすることが目標で、理想の中に4回転ジャンプは組み込まれていました。そのためのプログラムを作ってきたのに、回避してしまったら、すべてが無駄になりますよね。自分に負けたということにもなります」

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 自分の目指すべき場所=理想を、試合の、フィギュアスケートの状況によって揺るがすことはなかった。ただひたすら理想を追い求めた先にあったのが、銅メダルだった。

 しかも1シーズン欠場する大怪我からの復帰を経てのメダルだ。だから次の言葉には、格別の重みがあった。

「演技の内容に満足しているわけではありません。でもメダルを獲れたことはすごく嬉しかったし、そこまでのプロセスでは本当に頑張れたと思う。今回は自分を褒めてあげたいです」

 銅メダル、そしてそこまでに至る足取りも含め、高橋大輔というスケーターとともに記憶されたのがバンクーバー五輪だった。

(松原 孝臣 / Takaomi Matsubara)

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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