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フィギュアは「採点競技だから」と言われたくない 五輪解説者・本田武史の葛藤と自負

バンクーバー五輪で発した「まだここからです」の一言

 これまでの解説者人生で心に残っているのは、2010年バンクーバー大会での一言だ。男子シングルで高橋大輔が日本人選手として史上初の銅メダルを獲得したが、フリーの時、最初の4回転トウループで転倒した。

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 その瞬間、本田は「まだここからです」と言葉を発した。

「転倒した時、きっと『これでメダルはない』と思った方が多かったと思います。でも転倒=メダルがなくなる、というわけではなく、その後きちんと滑ることができれば届くわけです。咄嗟に言えたのは良かったと思います」

 北京大会でも、開幕前に現地入りする。今大会のフィギュアスケートは中国が期待を寄せるペアが最終種目となっているが、本田はペアの解説も担当することになったという。

 そして、そのペアに出場する三浦璃来・木原龍一に注目してほしいと言う。

「三浦璃来はシングルの頃、教えていた選手です。ペアという形でオリンピックに出ることがものすごく嬉しいですね。そして日本人同士のペアとして最高の難易度ができる、世界で戦えるペアがようやく出てきた。ぜひ観てほしいです」

(文中敬称略/5日掲載の第2回へ続く)

(松原 孝臣 / Takaomi Matsubara)

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本田武史


 1981年3月23日生まれ、福島県出身。14歳で全日本選手権初優勝を果たすと、98年長野五輪に16歳で初出場。2002年ソルトレークシティ五輪にも出場し、4位入賞を果たした。世界選手権で銅メダルを2度獲得したほか、日本人選手として初めて競技会で4回転ジャンプを3回成功させる偉業を成し遂げるなど、日本男子フィギュア隆盛の礎を築いた。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、テレビ解説者、そして指導者として後進の育成に力を注いでいる。

松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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