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米国のスポーツと暴力、命を脅かす一面も 全米の審判13%は「襲撃を受けた経験あり」

全米のスポーツ審判の13%が「襲撃を受けた経験がある」と回答

 最近でも、昨年11月にカリフォルニア州サクラメントで行われた子どものサッカーで、審判が、判定に抗議をして詰め寄った10代の子どもを、これ以上近づき過ぎないようにと、手で制止した。この場面を見た父親が激高し、この審判に突撃して倒すという出来事があった。父親は子どもを守るために行動したと主張したが、軽犯罪の容疑で裁判所への出頭を命じられている。

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 また、昨年12月にはワシントン州の中学生のバスケットボールの試合で、選手の父親が、72歳の審判を背後から襲撃して転倒させた。体育館の床に叩きつけられたこの審判は鼻の骨と肋骨2本を骨折した。父親は暴行罪を問われ、現在、裁判で争われている。

 私は保護者として15年近く、米国の子どものスポーツに関わってきた。このリストに挙げられたような深刻な暴力を目撃したことはないが、あわやというシーンには何度か居合わせた。アイスホッケーの試合でコーチが審判の判定に怒って会場全体が騒然となり、試合続行できなくなったこと。小学校低学年のレクリエーションの野球の試合中に、親が10代の球審に野次を飛ばしたところ、その審判の親もすぐ近くにいて、一言、二言であったが言葉の応酬があったこと。サッカーの試合でコーチが審判に暴言を浴びせ、退場処分になったこと。

 全米のスポーツ審判を対象にした調査でも、約13%が襲撃を受けた経験があると回答しており、男性審判の48%、女性審判の45%が審判をしていて危険を感じたことがあるとしている。このような調査、いくつかの暴行事件の報道、そして私自身の個人の経験からも、米国では、スポーツの種目や地域を問わず、保護者、コーチや選手自らが審判を罵り、暴力をふるうことが少なからず起こっていると言ってよいだろう。マスメディアに取り上げられていないものでも、ネット空間には、このような暴行を捉えた短い動画が多くアップされている。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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