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厳格な父が名ストライカーを育てる? 点取り屋の“執念”を植えつけた男と男の関係性

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、サッカーの中でも育成するのが難しいと言われるストライカーについて。優秀な点取り屋はどのようにして生まれてくるのかという問いに対し、小宮氏はスペインと日本のサッカー史にその名を刻む2人のストライカーを例に、父の愛情と厳しさが原点にあるとしている。

ヴィッセル神戸時代のダビド・ビジャ【写真:Getty Images】
ヴィッセル神戸時代のダビド・ビジャ【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:ビジャの父が語った独自の教育論

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、サッカーの中でも育成するのが難しいと言われるストライカーについて。優秀な点取り屋はどのようにして生まれてくるのかという問いに対し、小宮氏はスペインと日本のサッカー史にその名を刻む2人のストライカーを例に、父の愛情と厳しさが原点にあるとしている。

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 男女の表現はジェンダー問題に留意すべきで、迂闊なことは書けない。

 しかし取材を続けていると、「ストライカーというのはひどく男性的なポジションだ」と感じることがしばしばある。例えばイタリアサッカー界では、性行為における男性器をゴールに準える人が少なくなかった。スペインでも、ゴールを決められないFWを“不能”呼ばわりする表現が存在している。それらは行き過ぎているが、人々の中に育った意識でもあるのだ。

 ストライカーは、本能的な要素が著しく強い。

「ストライカーは育てられない、生まれるもの」

 それは世界サッカーにおける定説になっている。“天然もの”が放つ魅力は、“養殖もの”とは比べものにならない。ストライカーに関してだけは、論理的に情愛を持って育てようとすればするほど、育たなくなるという現象がある。生来的にストライカーかどうかで、ほとんどは決まる。

 これは本稿のように、育成論を語る上では実に厄介だ。

 それでもロジックを探すならで、優秀なストライカーは父と子の関係性を強く感じさせることが多い。

 世界的ストライカーであるダビド・ビジャは、その典型だった。EURO、ワールドカップで得点王を獲得し、スペイン代表として欧州王者、世界王者に。クラブレベルでもFCバルセロナを中心にゴールを量産し、最後はヴィッセル神戸で長い幕を閉じた。

 炭鉱夫の息子として育ったビジャは、父独自の教育論で育っている。

「学校の先生が、『サッカーの時間を減らし、もっと勉強させてください』と文句を言ってきやがったことがある。『息子のことは息子が決める。サッカーをやめさせるくらいなら、学校をやめさせる』と言ってやったよ」

 父メルは葉巻をふかし、筆者に語っていた。地下800メートルでランプを掲げ、石炭を掘る作業で絆や仲間意識が命綱だった。それだけに勉強は不要でも、チームの一員として戦う精神だけは息子に伝えたという。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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