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日本の部活改革で議論の的に 全米も悩む指導者コスト問題、誰が負担するべきか

無償で提供される学校教育の一部であるが、必須ではない運動部活動

 2016年12月31日時点の調査(Pay to Play? State laws related to high school sports participation fees)では、運動部活動の参加費徴収を禁じている州はカリフォルニアだけになった。90年代後半の調査と比べると、州法が参加費徴収の方向へシフトしていることがわかる。全米50州とワシントンDC地区のうち、中学や高校で課外活動での参加費徴収を認めている州は17あり、そのうちの9州では支払えない生徒のための免除について規定している。ただし、認めている州の全ての学校で参加費を集めているというわけではない。最終的には各学区教育委員会が決定する。他の州には参加費徴収に関する法律はないので、各学区教育委員会がそれぞれに判断し、参加費を徴収するかどうかを独自に決めている。

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 また、2012年のミシガン大による全米を対象とした調査では、学校運動部に参加している子ども(12歳から17歳)を持つ保護者のうち約6割が参加費を支払っていると回答している。調査対象年齢が全く同じではないから、簡単には比較できないが、80年代はじめの11%から比べると「徴収している学校も一部ある」から「徴収している学校が過半数を超える」に変化しているといえるだろう。

 参加費の支払いを求めるシステムの最大の問題は、支払えない家庭の子どもが運動部活動をする機会を失うのではないか、ということだ。米国でも繰り返し調査されている。前述した2012年のミシガン大の調査では、世帯年収を6万ドル(約686万円)で区切って参加費徴収の影響を見たところ、6万ドル以下の家庭では、19%の保護者が参加費のために学校運動部への参加が減ったとし、6万ドル以上の家庭では、5%だったという。参加費の平均額は93ドル(約1万600円)だったが、150ドル(約1万7000円)以上という回答が21%あり、支払いを免除されているという回答は6%だった。

 しかし、家計に多少の余裕のある保護者は、たとえ参加費を支払っても、学校外の民間チームでの活動にかかる費用よりも安いと感じているように見受ける。支払えない家庭にとっては、学校運動部が消滅した場合、学校外の民間チームに参加することはよりハードルが高くなるのではないか。

 運動部活動を維持するために参加費を集めざるを得ないが、お金のために参加をあきらめる子どもが出てこないようにという難しいバランスが求められる。日米ともに「無償で提供される学校教育の一部であるが、必須ではない運動部活動」の財源をどこに求めるのかは簡単には解決できない、悩ましい問題だ。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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