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井岡一翔に挑む35歳の遅咲きボクサー 元世界王者も経験、人生を懸けた挑戦者の怖さ

“死に物狂い”で来る挑戦者の気迫は恐ろしいものがある

 井岡の前回の試合は9月に行われた3度目の防衛戦、元王者のフランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(メキシコ)と戦った。戦前の予想では井岡有利だった。しかし、試合では苦戦を強いられ、3-0の判定で勝利したものの前に出てくる挑戦者に手を焼いた。

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 精密機械のようなボクシングが強みの井岡だが、乱打戦に持ち込まれると弱い一面もある。サウスポースタイルで、好戦的なスタイルの福永にもチャンスはあるだろう。

 福永にとっては思いがけないチャンスだ。所属ジムを通じて「大晦日までに完璧に仕上げます。人生を変えます」とコメントしている。

 世界戦は、選ばれたボクサーしか立つことができない特別な舞台だ。私も初挑戦の時は気合も入り、普段の実力以上の力を発揮できた。一方、井岡は念願の統一戦が流れてしまい、残念な気持ちもあるだろう。両者の試合へのモチベーションの差は大きい。

 私も経験しているが、“死に物狂い”で来る挑戦者の気迫は恐ろしいものがある。技術も大切な要素ではあるが、世界戦となるとそれだけでは超えられない壁がある。偉大な王者が、気持ちが強い挑戦者に敗れ、番狂わせを起こすケースはいくつもある。福永が好戦的なファイトでその壁を越えられるか、それとも井岡が普段通りのボクシングを貫けるか、序盤のペース争いで勝敗は分かれるだろう。

 井岡は年末のボクシングの顔として、これまで9回、大晦日に試合をしている。2021年を締めくくるボクシングで、日本人ボクサーたちがどんなドラマを見せてくれるのだろうか。

(木村 悠 / Yu Kimura)

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木村 悠

1983年生まれ。大学卒業後の2006年にプロデビューし、商社に勤めながら戦う異色の「商社マンボクサー」として注目を集める。2014年に日本ライトフライ級王座を獲得すると、2015年11月には世界初挑戦で第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオンとなった。2016年の現役引退後は、株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動、社員研修、ダイエット事業など多方面で活躍。2019年から『オンラインジム』をオープンすると、2021年7月には初の著書『ザ・ラストダイエット』(集英社)を上梓した。

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