記者にとって刺激的なアスリートのコメント クライミング野中生萌に好感を持てた理由
2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートさせた。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第7回は、東京五輪スポーツクライミング銀メダルの野中生萌(みほう・XFLAG)が登場する。1月の大会で正直に胸の内を語る姿は清々しかった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
一人の記者が届ける「THE ANSWER」の新連載、第7回はスポーツクライミング・野中生萌
2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートさせた。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第7回は、東京五輪スポーツクライミング銀メダルの野中生萌(みほう・XFLAG)が登場する。1月の大会で正直に胸の内を語る姿は清々しかった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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えっ、言っちゃうんだ。虚をつかれたコメントだった。
1月に東京・駒沢屋内球技場で行われたボルダリング・ジャパンカップ。東京五輪代表の野中は2位に終わった。取材エリアでマイクを握り、スピーカーを通して響かせたのはサバサバとした口調。包み隠さず胸の内を明かしていた。
「正直なことを言ってしまうと、もう4課題目はやる気がなかったです。もう優勝もなかったので」
決勝は全4課題。最後の壁を迎えた時、優勝はすでに全完登した森秋彩(あい)に決まっていた。各課題の制限時間は4分。3課題目まではすぐさま登り始めた一方、最後は壁をゆっくりと見上げながら30秒もかけて準備を整え、腹をくくったかのようにトライした。
投げやりになっていたわけではない、と言い切れる。いつも真摯な選手だからだ。
取材では質問者と目を合わせ、軽くうなずき、自分の頭で解釈しながら真正面から受け止める。答えが明確なら「それはないです」とビシッと即答。まだまだメジャー競技とは言えないスポーツクライミング。素人の記者に対しても、身振り手振りで細かく解説してくれる。この大会でも一通り語り尽くした最後に「すみません、長くて」と苦笑い。競技の魅力を広く伝えてほしいという想いに溢れていた。
正直に思いを表現することが得意な選手もいれば、当たり障りのないコメントで“しのぐ”選手もいる。スポーツ選手でも多大なサポートを受けながら活動する時代。自分の言葉に責任を持ち、いろいろな方面に配慮しながら答えなければならない。ただ、どちらが見ている人に響くのか、言うまでもない。本音を語る選手は、取材する側にとっても刺激的だ。