走りを通じて学べる、人生に大切なこと 元五輪選手が宮古の子供たちと過ごす半年間
子どもたちに伝えた言葉「走る練習は単調でつまらないかもしれません。でも…」
さらに、伊藤さんへの質問コーナーも。元オリンピック選手になんでも聞ける機会に次々と手が挙がった。「アスリートとして大事にしていることは何ですか?」「靴はどんなポイントで選んだらいいですか?」「大会後の筋肉痛を解消するトレーニングメニューはありますか?」などなど。「走っている時は何を考えていますか?」という素朴な質問に、伊藤さんはこう答えた。
「自分がどんな風に走っているか、フォームのことを考えはしますが、人間が走りながら気をつけることができるのは1つくらい。あれもこれもと気にしながら走ろうと思っても難しい。だから、1つだけ気をつけるポイントを決めて走る方が集中力を発揮できると思います」。トップアスリートならではの答えに、子どもたちも納得したように頷いていた。
伊藤さんが拠点を置く東京と宮古まで、その距離およそ480キロ。今後は「スマートコーチ」を通じて伊藤さんが課題を与え、子どもたちがそれに取り組む様子を動画で撮影。返信された練習動画を見た伊藤さんがアドバイスを返す、という形でコミュニケーションを図っていく。距離を越えた新たなチャレンジ。最後に、伊藤さんはこんな言葉を贈り、別れを告げた。
「走る練習は単調でつまらないかもしれません。(球技のように)ボールを投げたり蹴ったりした方がいいかもしれません。でも、走りはシンプルだからこそ突き詰めると面白い。頭をひねって、どうすれば速くなるだろう、上手くいくだろうと考えていく。このプログラムを通して、走りだけじゃなく“これはどこにポイントがあるんだろう”と考える癖がつく。そういう、きっかけになればいいなと思っています」
走りを通じて学べる、人生に大切なこと。タイムとともに、それを追い求める半年間になる。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)