Jリーガー大津祐樹、中学時代にスクールで技術習得 本気の恩師と「対峙して学んだ」
酒井宏樹とともに立ち上げたスクールでも“ガチンコ”姿勢は変わらない
具体的にどのような指導が行われていたのか。大津はそのすべてを細かく記憶していなかった。
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それには、理由がある。
「直接的に『ああしなさい、こうしなさい』という指導を受けた記憶はほとんどありません。それよりも一番上手い浅野さんを見て、対峙して学ぶことが多かったです。身近に良いお手本があるのは、子供にとって最高の環境だと思います。そういった部分でmalvaのアプローチはとても優れていますし、上手くなるためにはどうすればいいのかを自分で考えられるようになりました。技術や戦術はもちろん大切ですが、そういった思考の部分が自分の基盤になっています」
malvaでレベルアップを志した時期から年月が経ち、今度は自分自身がサッカースクールに携わりたいという思いが芽生えた。こだわったのは「自分が現役のうちに」だ。
「プロキャリアを引退してからスクールを立ち上げる人は多いと思います。あとは、たまに選手が顔を出してくれるスクールはあるかもしれないけど、一緒に写真撮影するだけだったりします。僕が子供の時もそういった機会はありましたけど、それよりも僕は『一緒にプレーしたい、戦いたい』と思っていました。そうやって子供の時に抱いた感情を、大人になって実現できる立場になったらやりたいと考えていたんです」
そして2015年、柏時代からの盟友である酒井宏樹(浦和レッズ)とともに『大津祐樹×酒井宏樹サッカースクール powered by malva』を立ち上げた。浅野との何気ない会話をきっかけに、malvaの力を借りる形で思い描くスクール像を現実に変えていく。
「僕はプロになってからもmalvaの練習に顔を出して学ばせてもらいました。それくらい自分のサッカー人生において大きな存在だったので、同じような形で指導を受けられることに価値があると思いました。育成年代だからこそレベルが高い人間と一緒にプレーして、何かを吸収してほしい。昨今はコロナ禍の影響もありますが、オフには必ず参加して一緒にプレーしています。いわゆる“ガチンコ”です。これがプロだ、と見せつけます。それは『このレベルに追いついてこい』というメッセージでもあります。生のプレーだからこそ学べることがあるはずです」
恩師である浅野が今も同じコートに立って子供から学びを得ているように、教え子である大津もコートに立てば本気でプレーする。立場が変わっても学びがあるのがmalvaの特徴で、伝統は次の世代へ脈々と受け継がれていく。
(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)