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日本人選手が模範とすべき中田英寿らの生き方 海外の環境に「迎合する必要はない」

浦和時代の長谷部が見せた真摯な姿勢

 この性格は南米やスペイン、イタリアなどでは、「真面目過ぎる」と否定的に捉えられなくもない。

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「騙される方が悪い。盗られる方が悪い」

 それがまかり通るラテン系国家では、人の意識も一線を画す。マリーシアという表現に象徴されるように、抜け目のなさ、狡猾さ、あざとさが行動原理にある。サッカーが駆け引きを基本にしている以上、相手の裏をかくこと=技術という捉え方があって、その技量に長ける選手が重用される。

 日本人サッカー選手がラテン系国家で難渋してきたのは、そこに理由があるだろう。昨今はやや結果を出しつつあるが、多くがノッキング。日本人特有の真面目さが尊ばれないからだ。

 一方、多くの日本人サッカー選手がドイツ、オランダ、ベルギーでは成功を収めている。道徳観に共通するところがあったり、国として多様性を認めたりしている点があるからだろう。日本人らしさが符合するのだ。

 筆者は浦和レッズに所属していた長谷部誠(現在はフランクフルト所属)に、寮にある一室でインタビューしたことがあった。長谷部は室内に通された取材陣に対し、自らかいがいしくお茶を給仕し、静かに座って話を促した。わざとらしくなく自然で、彼がいつも人とどのように接しているのか、濃厚に伝わってきた。会話のやりとりも、実に真摯だった。

 長谷部がドイツで長く活躍しているのは必然だろう。

 一方、バルセロナにサミュエル・エトーのインタビューで訪れた時は、「気が向かないから明日」と言われたし、キャプテンであるカルレス・プジョルでさえ「歯医者の予約を忘れていた」とドタキャンで次の日になった。海外で選手を取材する者としては想定内で、こちらも駆け引きで「明日は長めに時間を頂戴ね」と布石を打つ。間違っても、真面目に怒るわけにはいかない。それこそ、文化に合わないのだ。

 サッカーをする、とは大げさに言えば、サッカーを生きることである。もし日本以外でサッカーをするなら、「ボールは友達」ではやっていけない。そこにいる人々と対等に対話し、交流できるか、が問われる。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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