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海外挑戦は「若いほど良い」は幻想 18歳メッシの適応と「自己の確立」の重要性

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。3回目となる今回は、若き日のリオネル・メッシをインタビューした際に感じたアルゼンチン人としての成熟した姿に注目。海外挑戦をする際には、1人の人間としてアイデンティティの確立が重要になると説いている。

リオネル・メッシが歴代最高の選手になった所以とは【写真:Getty Images】
リオネル・メッシが歴代最高の選手になった所以とは【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:メッシが歴代最高の1人になった理由

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。3回目となる今回は、若き日のリオネル・メッシをインタビューした際に感じたアルゼンチン人としての成熟した姿に注目。海外挑戦をする際には、1人の人間としてアイデンティティの確立が重要になると説いている。

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 なぜリオネル・メッシ(パリ・サンジェルマン)が、歴代最高のサッカー選手の1人になれたのか。その検証・考察は、育成論そのものにつながるだろう。

「レオ(メッシ)は成長に際限がなかった」

 元ブラジル代表ダニエウ・アウベスは、バルセロナ時代のチームメイトだったメッシについて、こう評していた。

「技術的に素晴らしい選手は山ほどいる。ドリブルで相手をひゅんひゅん抜き去るテクニシャンとか。でも、レオはサッカーにおけるすべての技術を上達したがった。ヘディングも、プレースキックも、得意でなかったプレーもとことんトレーニングし、いつの間にか身につけていた。彼は選手がやったプレーをコピーし、それを改善し、自分のものにできた。能力も、向上心も圧倒的だったんだ」

 技術面でメッシが際立っていたことは間違いないが、特筆すべきは上達する「意欲」だったという。

 筆者は18歳だったメッシにインタビューしたことがある。殺風景なクラブハウスの一室。彼は記者を前に話をすること自体に興味はなく、どこか義務的に感じているようだった。しかし質問に対する答えは芯が通っていて、人生哲学の確立を強く感じさせた。

「人づきあいが苦手なだけだよ」

 メッシはそう言って笑みをもらした。彼にとって、自分を表現するのはピッチで、プレーがすべてだった。実際、ピッチに立った時の彼はスイッチが入ったように別人の覇気を見せた。

「僕は勝つためにプレーするだけですよ。世間では、『バルサは面白いサッカーをして勝つ』なんて言われていますが、面白いかどうかは見方の問題で。自分には興味がありません。とにかく、僕は全部勝ちたいんです。『どのタイトルが取りたいか』って質問を記者がすることがあるじゃないですか? どれかなんて絞れません。アルゼンチンにいた時からですが、僕はどんな試合でも勝ちたい。勝利がすべて。サッカーをする時は、どんなプレッシャーをかけられても気にしません」

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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