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「才能」だけでは戦えない スペイン名門が重視、育成年代に求める“共闘精神”

オヤルサバルが18歳当時に見せていた姿

 例えば、筆者が数年前にスビエタの練習施設を訪れた時のことだ。当時、18歳だったオヤルサバルは前日、トップチームの試合に出場していたにもかかわらず、次の日のユースの試合やBチームの試合をスタンドで観戦していた。同い年のチームメイトたちとはしごし、自然体で仲間の好プレーに声援を、悪いプレーに叱咤も送った。

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「ミケル(オヤルサバル)は戦いの意味を知っている。サッカーは仲間がいないと戦えない。才能だけではない選手で、必ず大物になるよ」

 チーム関係者はそう“予言”していた。

 オヤルサバルは現在24歳だが、すでに200試合以上に出場し、60得点以上を記録している。偉大なキャプテンとしてコパ・デル・レイ優勝にも貢献。スペイン代表の主力としても、EURO2020に出場し、欧州有数のアタッカーになっている。

「仲間のために戦えるか」

 簡潔なクラブ理念が、選手を正しく逞しく育て上げる。才能は儚く、危うい。しかし仲間のために戦う気持ちは、必ずよりどころになる。自らが助けたら、自らも助けられ、それは自ずとプレーを向上させる。

 格闘の中でのみ、「サッカーの知」は研ぎ澄まされるのだ。

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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