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ホテル&クリニック併設の“170億円新天地” パナソニックが目指す日本ラグビーの未来

異彩放つ新たな本拠地「スタジアムがないのにどうやって展開していくのか」

 現状では多くのチームが自社グラウンド、会社の敷地内の施設で強化に取り組む中で、ワイルドナイツの新たな本拠地は異彩を放つ。埼玉県、熊谷市、埼玉県ラグビー協会らとの協議を進め、ホームスタジアム(新リーグではホストスタジアムと呼ぶ)となる熊谷ラグビー場に隣接する公共の土地に、借り受けや、減免措置などの特例を生かしながら新たな拠点を構え、活動していくことになる。多くの参入チームがホストスタジアムの確保に難航している中で、いち早く公共のラグビー専用スタジアムのホーム化を実現している。ワイルドナイツが参入チームの中でも積極的に新リーグが掲げる構想に邁進する背景には、飯島GMの強い思いがある。

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「事業性という部分に取り組んでいくためには、最初の重要なポイントがスタジアムなんです。企業スポーツから、新たな存続できるフォーマット、形になっていくために、おそらくどのチームもスタジアムで苦労するはずです。でもスタジアムがなければ、その後のストーリーが描けないですよね。たとえば日程、スタジアムを使った波及効果のようなことに地域性という要素を含めると、スタジアムがないのにどうやって展開していくのか」

 そこで白羽の矢が立ったのが、これまでの拠点だった群馬県太田市にも隣接する熊谷の公共スタジアムだった。過去には大学ラグビーを中心に試合が行われてきたが、2019年W杯会場に決まったために、メーンスタンドを新築する大規模な改修が行われ、国際試合を開催可能な施設へと生まれ変わった。この最新のスタジアムをW杯後にどう有効利用できるかは、自治体にとっては大きな課題だったが、飯島GMを中心にパナソニックは積極的なアプローチを続けてきた。その流れを大きく後押ししたのは、新リーグのプロ化構想だった。

 プロ化の旗振り役となったのは、日本ラグビー協会の清宮克幸副会長だ。早大、ヤマハ発動機監督として卓越した指導力、組織マネジメント力を見せ、2019年に協会副会長に招かれると、6月の就任直後にはプロリーグ構想を打ち出した。その中に盛り込まれたのが、W杯日本大会の会場を新リーグ本拠地化するプランだった。

 清宮副会長の頭の中には、W杯の熱気を継承するのと同時に、設備の整った大会会場をそのままラグビーの公式戦会場として使おうという思惑があった。国内の多くの球技場が、Jリーグを中心としたサッカーを軸に使われているという現実も踏まえていた。同副会長は、W杯のレガシーを引き継ぎ、収益性も見込まれるスタジアムを確保するためにも、大会直後にプロ化へ一気に舵を切ろうとしたのだが、参入チームの中では「時期尚早」という声も強く、軌道修正を余儀なくされた。その産物が現在のリーグワンの姿だ。プロ化構想は大幅な図面の書き直しに至ったが、清宮副会長のプランにいち早く理解を示していた飯島GMは、熊谷との連携話を絶好のチャンスと判断して移転構想を押し進めてきた。

「例えばクリニックやホテルの話は、かなり以前から色々な所から、色々な相談がきていたんです。その中で、この熊谷の話が来たときに『いま!』と感じたんです。皆をまとめて話を進めようとね。そうじゃなかったら、わずか数年の間にこれだけの様々な事業はパンパンとまとまらないですよね」

 こんな嗅覚が飯島GMのキャラクターでもある。これは勝負師としてのものか、それとも商人の才覚か。その答えは、新リーグ開幕からの数シーズンで見えてくるはずだ。それでは、ワイルドナイツは新天地で何を目指しているのか。飯島GMが思い描き、現実になりつつあるビジョンを語ってくれた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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