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ホテル&クリニック併設の“170億円新天地” パナソニックが目指す日本ラグビーの未来

パナソニックの敏腕GM飯島均氏【写真:吉田宏】
パナソニックの敏腕GM飯島均氏【写真:吉田宏】

飯島GMが描くビジョンとは「ホームゲームをお祭りに」

「私たちと埼玉県もしくは熊谷市との協定の中には、地域の方の健康増進など社会課題の取り組みも盛り込まれている。私たちのようなスポーツチームはニュースバリューや求心力を持っている。それを生かしながら、クリニックがあって、地域の方々の子供の頃からの体の状況などを把握、管理したり、お年寄りの健康にも役に立てる。この公園(熊谷スポーツ文化公園)も利用して、いろいろなことが出来るでしょう。リーグワンで8回行われるホームゲーム(リーグ側未発表)は、熊谷伝統の『うちわ祭り』と一緒です。象徴的な祭りなんです。

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 それ以外に、日常的にここで私たちの練習を眺めたり、チームが使用していない時には高校のOB戦をやってもいい。アフターマッチファンクションもできます。ワイルドナイツが使っているグラウンドで出来るのも、1つの魅力でしょう。そして、私自身は、このようなホテルが作れるような都市が、まだ幾つかあると思っています。大切なのは、ただ単にラグビーの価値観だけで考えるのではなくて、行政、首長からの理解を得ることです」

 目指しているのは、スポーツがもたらす周辺住民らへの波及効果であり、チームがコミュニティーの架け橋になることだ。熊谷を舞台に、ワイルドナイツがラグビーチームの新たなロードモデルになることに挑もうとしている。健康管理だけではなく、すでに女子ラグビーでは、同じ熊谷が拠点の7人制クラブ「アルカス熊谷」も事務所を構えるなど、ここを1つの拠点とすることも決まっている。将来的には、子ども食堂のような社会福祉事業への取り組みも視野に入れるなど、様々なアプローチにトライを続けている。

 ラグビーのグラウンドを飛び出して、様々な可能性を模索し続ける飯島GMだが、その背景にあるのはプロ化への強い信念だ。原点は、パナソニックワイルドナイツの前身だった三洋電機時代に遡る。

「私たちの場合は、10年ほど前に会社が消滅してしまうという問題があった。そういう現実をまざまざと体感して、これから日本のラグビーが存続発展していくには、今(従来型の企業スポーツ)のままでは難しいと強く感じていましたね」

 東芝府中(現東芝)、トヨタ自動車らと共に長らく日本ラグビーを牽引してきた三洋電機だったが、2000年代には主力商品だった白物家電の業績不振などで経営が悪化。チームも廃部寸前まで追い込まれる状況に陥った。

 結果的には三洋電機自体がパナソニックに吸収され、2011年にラグビー部も同社チームに改称されたのだが、当時副部長だった飯島氏は、チーム存続のために駆け回る中で、企業依存だけではないチームの運営形態、つまりプロへの転換に可能性を感じていた。廃部を目の前に突き付けられ、存続が決まってからも、多くの強豪スポーツクラブを抱える世界的な大企業の中で“外様運動部”としてどのような存続価値を社内外に訴えることが出来るかをひたすら追求してきた飯島GMにとっては、プロ化は難しい筋書きではなかっただろう。

(後編に続く)

■飯島均(いいじま・ひとし)1964年9月1日生まれ。東京都出身。都立府中西高から大東文化大に進みFLとして活躍。4年で同大初の大学選手権制覇に貢献。三洋電機でも主将を務めるなど中心選手として活躍して、全国社会人大会決勝でサントリーと引き分けでの初優勝を遂げた95年シーズンを最後に現役を引退。96-99年に監督を務め、2001-03年は日本代表コーチ、05-07年は三洋電機コーチとしてチームの日本選手権初優勝を経験。08年に監督に復帰して、トップリーグ初制覇を遂げた10年に退任。2019年からGM。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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