田中将大の成功を渡米1年目で確信していた黒田博樹 打ち明けられた“ある悩み”とは
「柔軟性」と「曲げてはいけない部分」
黒田と田中に共通するのは、捨てることの出来る強さ。日本での実績、やり方にこだわらず、“メジャー式”の中でやれることを探し出した。一方で、捨ててはいけないことは捨てなかった。
メジャー1年目のシーズンが開幕する前、田中はある悩みを黒田に打ち明けたことがある。“メジャー式”を受け入れてキャンプに取り組んでいたが、実は、ブルペンに入っても30球程度しか投げることができない調整法に難しさを感じていたのだ。
どこかでその分を補えないか。田中に聞かれた黒田は「『投げたいんだったら投げればいい』と話した」と明かしている。黒田自身、キャンプ中に投げ込み不足を感じた時には、キャッチボールの最後にパートナーを座らせて、ブルペンでの投球練習と同じような強度で何十球も投げて締めくくることがあった。田中はその後、黒田と同じようにキャッチボールの強度を上げるようになり、1年目の開幕を迎えた。最高のお手本がすぐ近くにいたことも、田中にとっては大きかった。
「柔軟性」と「曲げてはいけない部分」。まさにこの2つをバランスよく混ぜ合わせ、異なる環境でも結果を残した黒田。3年目で初めてシーズンを通して先発ローテーションを守り抜き、リーグトップクラスの成績を残した田中も、それに続こうとしている。
ヤンキースのエースとして立場を確立した田中は今後、黒田も届かなかったサイ・ヤング賞を手にすることができるか。来季はさらなる飛躍に期待がかかるシーズンとなる。
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer