軽々しく「得意技」と言ってはダメ― 柔道金メダリストが語るこだわりとは
大学2年生で「本物の得意技」に
そして野村さんは「唯一自分を支えてくれた可能性」と信じていた背負い投げを磨き続け、大学時代に急成長。結果、五輪チャンピオンにまで駆け上がった。だからこそ、得意技に対する思い入れも非常に強い。
「大学2年くらいになって背負い投げが自分にとっての本物の得意技になりました。ただ、弱い相手をただ投げ飛ばすだけのものを得意技と言ってはいけないと思います。時には強い相手に対して大逆転することができたり、ピンチの時に救ってくれるものこそが得意技と言えるんです。もちろん、そこまでのレベルに磨き上げるのは難しいんですけどね」
そんな野村さんは今夏、大塚製薬株式会社が取り組む「ポカリスエット エールと、ともに。 ブカツ応援キャラバン」の一環で、神奈川県の桐蔭学園高を訪問し、全校生徒対象の講演会と柔道部への指導を実施。その際、柔道部員に自身の得意技である背負い投げをつり手、引き手、足の動きなどのテクニックを伝授していた。
連覇を目指したシドニー五輪では相手に研究されたこともあって「自分の柔道に変化をつけていかないと、と考えて技の幅を広げていくことにした」と振り返るが、「背負い投げが軸になっていたのは間違いない」。自分の立ち返れる原点こそが背負い投げ――。柔道史に残る偉業達成の裏には絶対的な得意技の存在があった。
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ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer