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五輪アスリートが訴えたSNS中傷問題 「死ね」と言われた元陸上選手の「戦わない」提案

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。陸上はスプリント指導のプロ集団「0.01 SPRINT PROJECT」を主宰するアテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏と元400メートル障害選手でスプリントコーチの秋本真吾氏が、走りの新たな視点を提案する「走りのミカタ」を届ける。

秋本真吾さんが「アスリートへのSNS中傷問題」を語る【写真:Getty Images】
秋本真吾さんが「アスリートへのSNS中傷問題」を語る【写真:Getty Images】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#98

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。陸上はスプリント指導のプロ集団「0.01 SPRINT PROJECT」を主宰するアテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏と元400メートル障害選手でスプリントコーチの秋本真吾氏が、走りの新たな視点を提案する「走りのミカタ」を届ける。

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 第8回の最終回は特別編。17日間で印象に残った出来事から、秋本氏が「アスリートへのSNS中傷問題」を語る。複数の選手が被害を訴えた問題。秋本氏はかつてスプリントコーチとして注目され始めた時、ツイッター上で「死ね」「殺してやろう」などと悪質な誹謗中傷を受け続けた経験を持つ。現在は他競技も含め、多くのアスリートを指導し、交流がある立場から考えを明かした。(取材・構成=THE ANSWER編集部・神原 英彰)

 ◇ ◇ ◇ 

 熱戦に幕を下ろした東京五輪。この舞台にかけてきた選手たちの姿が胸を打ち、感動を呼んだ。しかし、課題も残った。その一つが、SNS上でアスリートに向けられた誹謗中傷。複数の選手が大会期間中に被害を明かした。

 秋本氏は17日間を振り返り、この問題に強い関心を寄せた。

「この問題はどちらの視点で考えるか、難しいところですよね。アンチか、中傷を受けるアスリートか。まず、アスリート側は周囲の評価を自分なりに取捨選択する軸を持った方がいいと思っていて、僕もツイッターで軽い炎上を経験したこともありますが、今は自分のアルゴリズムで分けてしまいます。こういう意見は受け入れる、こういう意見は受け流す、と。

 アスリートは純粋で、すべてを受け止めに行ってしまいます。野球、サッカーというプロ競技はエラーをしたら球場でヤジが飛ぶし、負けたらブーイングされることって大きな違和感はないですよね。でも、陸上はあり得ないんですよ。例えば、伊藤友広が日本選手権でミスして予選落ちしたとしても『何やってんだよ、この野郎!』という声は絶対に飛んでこないです」

 自身もかつて特定の人物とみられるアカウントから誹謗中傷の言葉をぶつけられ、1日50件以上に及んだことがある。当時はまだ若く、心を痛めた出来事だった。アスリートがどれだけ“免疫”を持っているか。それも一つの課題になる。

「マイナースポーツの選手たちはそういう声に慣れていません。でも五輪が始まったら一気に注目を浴び、普段は飛んでこない声も全部キャッチしてしまう。しかも、直接ではなくネットを介して顔も見えない、誰かも分からない声です。卓球の水谷選手は誹謗中傷の存在をオープンにして、自分にとってはノーダメージであると発信しました。アスリート側から声を上げることは大切ですが、火に油を注いでしまうパターンにもなり得ます。

 一番は『戦わない』ということなのかなと思います。例えば、メジャーリーグの舞台で活躍している大谷翔平選手は凄くクリーンで、みんなに愛されているイメージがありますよね。でも、その裏ではきっとアンチの声を多く受けていると思うんですよね。最近はオールスターに出た後、しばらく打てなかった時に『オールスターに出たから疲れたんだろ』という声もありました。でも、彼はSNSで全く触れないから炎上もしません」(秋本)

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