世界8000万人の難民の希望背負って イラン人選手が国籍失っても、もう一度夢見たメダル
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。1996年アトランタ五輪に競泳で出場した井本直歩子さんは引退後、国際協力機構(JICA)や国連児童基金(ユニセフ)の職員として活動した経験をもとに、五輪の意義を考えていく。今回は29人が出場している難民選手団について。彼らが五輪という舞台で戦う意味、そして、政権の搾取から逃れて亡命したテコンドーのイラン人メダリストの存在をコラムで伝える。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#43
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。1996年アトランタ五輪に競泳で出場した井本直歩子さんは引退後、国際協力機構(JICA)や国連児童基金(ユニセフ)の職員として活動した経験をもとに、五輪の意義を考えていく。今回は29人が出場している難民選手団について。彼らが五輪という舞台で戦う意味、そして、政権の搾取から逃れて亡命したテコンドーのイラン人メダリストの存在をコラムで伝える。
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イランから東京五輪に出場している選手は計66名。ただし、他にもイラン人が今大会に出場しているのをご存知だろうか。
27日、柔道男子81キロ級で日本の永瀬貴規(旭化成)に敗れ、銀メダルを獲得したモンゴル代表のサイード・モラエイは、モンゴルに亡命したイラン人だ。
モラエイは2019年世界柔道選手権で、イスラエル選手との対戦を巡り、国から出場を辞退するよう圧力をかけられた。モラエイはこれに抵抗し、試合に強行出場。そして大会後、身の安全を確保するためにドイツに渡り、難民申請をした。家族とはそれ以来会えていないという。
モラエイのように、亡命先で市民権を獲得できた選手は、その国の代表として出ているが、国籍がないままの選ばれた難民アスリートは、難民選手団代表として五輪に出場している。難民選手団は2016年のリオデジャネイロ五輪で初めて結成され、国際オリンピック委員会(IOC)は今大会、29人の難民選手団代表を派遣している。
紛争や迫害などの理由で、母国で身の危険に晒されている難民は今日、世界に8000万人以上いる。IOCは、この難民たちにスポーツをする機会を与えること、難民アスリートを通して希望を与えること、そして世界が難民の状況を理解し、連帯(ソリダリティ)のメッセージを生み出すことを目的として、難民選手団を結成してきた。
命の危険が迫るような苦境にいても、厳しいトレーニングを積み、諦めない、努力の姿。
誇りを持って、一人のアスリートとして、世界のトップアスリートと正々堂々と戦う姿。
難民選手団の姿は、世界に8000万人いる難民の希望を背負い、母国の人々に勇気を与え、また、それ以外の人々にリスペクトを生み出させる。