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五輪と重なり考えた女性アスリートと月経 伊藤華英「言ってはいけない時代じゃない」

月経と五輪が重なり考えた女性アスリートの体の問題

 今、私は「1252プロジェクト」という教育プログラムを行っています。これは、学生向けに“女性アスリートと生理”ついて発信するもの。もともと、そのきっかけとなったのが、私の五輪の経験でした。

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 2008年北京大会、私は競泳の競技期間と月経期間が重なり、大会前に初めて服用したピルが体質に合わず。体重が2~3キロ増え、コンディションを崩してしまいました。この経験が女性アスリート特有のコンディショニングについて考える転機に。

 引退後の2016年リオデジャネイロ五輪では、競泳の中国代表・傅園慧選手が「生理中でいい泳ぎができずにチームメートに謝った」と語ったことがきっかけになって、もう言ってはいけない時代じゃないと感じ、こうした活動をするようになりました。

 女性は月経が月に一度、当たり前のように来る。それが特別とは思ってもいない。その分、問題提起もしづらい背景がありました。しかし、症状は一人一人違う。軽い人も重い人もいる。その中でつらい思いをする選手もいれば、症状にうまく対処できている選手もいる。

 根底にあるのは、いまだに根強い「言っちゃいけない」「我慢しなきゃいけない」という意識であり、この問題を発展させてこなかった原因。つらかったら口に出していいと、伝えていきたい。

 トップアスリートは男性も女性もコンディションを整えることはとても難しい。しかし、女性の場合は月経の要素も関わってきます。今大会も1年延期のために月経周期がずれ、調整が難しくなった選手もいるはずです。

 男性記者が陸上選手にレース後のミックスゾーンで「調子、悪そうですね」と問いかけたら「今日、月経だったんです」と返され、それ以上、何も質問できなくなったという話を聞いたことがあります。

 拒否反応ではなく、受け止める社会になる必要がある。そのためには知識もある程度は必要になる。排卵をして妊娠し、やがて生命を宿すために来る、人間の根源的な現象。若い選手を育てている男性の指導者、保護者の方が少しでも考えるきっかけになればと思います。

 余談ですが、最近の「ママさんアスリート」が増えていますが、「パパさんアスリート」はたくさんいるのに全く言われない。その点は違和感があります。必ずしも「ママさんアスリート」が増えればいいということではなく、出産後も選択肢として競技の道があることが大事だと感じます。

 今でこそ、「女性アスリートと月経」の問題がスポーツ界で注目される一つのトピックになりました。前回の2016年リオデジャネイロ五輪当時とは全く異なる状況。世の中の空気に大きな変化が起きてから迎える初めての五輪です。

 競技で輝く裏で、女性アスリートが難しさと向き合っていることを感じる機会になることを願っています。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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