「マジでサッカー好きなんすよ!」 松田直樹、マリノス最後の日にカメラマンが撮った涙
松本カメラマンが撮った思い出の写真たち
ほかにも思い出深い写真があります。
2006年のアビスパ福岡戦は山瀬功治選手と抱き合って、凄く良い顔をしてますよね。
2007年の清水エスパルス戦は彼らしい体を張ったプレー。身を挺して絶対に点をやらない。
2009年の柏レイソル戦は引き分けに持ち込まれ、がっくりしてピッチに倒れ込んだ。
戦っている時は迫力がありますが、表情が豊かで撮りがいがある。そういう人の方が、絵になりやすいですよね。だから、どうしても追ってしまいます。そういう意味では2004年のFC東京戦は彼を狙っていたら、水を吐いた面白い絵になりました。
喜怒哀楽。彼はそのどれもが良いですが、「怒」の時は彼らしくて好きですね。激しい部分が表れていたと思います。
それだけ特別な選手だったから、亡くなった時は本当に驚きました。
マリノスを離れ、松本山雅に行った時、アルバムをプレゼントしていたんです。これから新しいチームでもまたキャプテンシーを発揮して、頑張ってくれるだろうなと。そう思っていた矢先、練習中に倒れたと聞いて、そんなことがあるのかと。
彼はファン思いの選手でした。ファン感謝デーで変装したり、ダンスを踊ったり。彼くらい結果を出して、立場のある選手になっても、ファンへのサービスを忘れず、ファンを大切にしていた。
今の若い選手にはその姿勢を引き継いでくれたら、うれしいですね。みんな、技術はプロ中のプロ。代表になっている選手もいるし、超一流のプレーヤーばかり。だから、ファンを大切にする選手でいてほしい。
彼のように生きるのは難しいと思いますが、自分が持っているものをストレートに表現してほしいという思いはあります。悲しければ泣くし、腹が立てば怒る。私は、そういう選手に魅力を感じるので。
今の彼に声をかけるなら「戻っておいでよ」かな。あまりに早いし、あまりに突然だったから。もし、生きていたら44歳。もう、指導者になっていたでしょうね。いったい、どんな指導者になっていたのか。
その松田直樹の顔を、撮ってみたかったなと思います。
横浜F・マリノス オフィシャルカメラマン
松本正
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)