選手村で感じた「世界の不平等」 日本人五輪スイマーが引退後にユニセフで働く理由
ユニセフで行う仕事のミッションは「すべての子どもに教育の機会を与える」
ルワンダ虐殺の記事を読んだのは高校3年、ちょうど進路選択の時期。「五輪に出場した後の人生は、恵まれない環境下の人のために生きたい」。そう考えた井本さんは、慶應義塾大学総合政策学部へ進学。進学後はぼんやりと「国連で働く」という目標を抱き、到達するために必要なステップを洗い出した。英語力、修士号の取得、発展途上国での実務経験――。アトランタ五輪後、米国の大学へ留学を決めたのも、国連という目標に近づくためでもあった。
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そして、引退後は英マンチェスター大学大学院で修士号を取得。国際協力機構(JICA)のインターンとしてガーナに派遣された後、シエラレオネ、ルワンダの「企画調査員」で平和構築支援に取り組む。その後、外務省の国連職員のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー採用試験を突破。07年、ユニセフの教育部門に配属され、高校時代から目指していた道を歩み始めた。
ユニセフに配属後は、スリランカ、ハイチ、マリ、ギリシャなどの被災地、紛争地、難民を受け入れる国に赴任。紛争・災害下の子どもの教育問題の解決に、奔走する毎日を送ってきた。
「すべての子どもに教育の機会を与える。これが私のユニセフでのミッションです。
人間はオギャーと生まれた瞬間に人権を持ち、教育を受ける権利もその一つです。教育を受けられない子供がいるならば、政府だったり親だったり、与える立場の人が責任を持って機会を与えなければいけません。ユニセフの仕事は、教育を与える責任を持つ人がその責任を全うするよう支援すること。例え赴いた国の政府が機能していなくても、汚職が横行していても、反対勢力があっても、やらなければなりません。だって取り残されるのは子どもたちだから。
特に私は、子どもたちがきちんと教育受けられないことに、ものすごい怒りを覚えるんですね。
教育を受ける権利は平等にあっても、実際は生れた場所により、恵まれた教育を受けられる子もいれば、受けられない子もいる。だからといって、正当な教育を受けられず、発達が遅れ、将来、ちゃんとした人生を送れないこの状況が、許されていいわけがない。この怒りの気持ちが仕事の原動力になっています」