ソフトバンクで働きながら戦うパラアスリート太田渉子があえて厳しい道を歩むワケ
パラスポーツを通して伝えたい思い「世界で活躍できる機会や場所がある」
テコンドーはパラリンピックで唯一、相手を殴ったり、蹴ったりすることが許されている格闘技だ。柔らかい表情と穏やかな声で話す太田からはテコンドーをする姿が想像できない。太田自身も「初めは人を蹴るとか、殴るということにかなり躊躇した」と語る。もちろんスキーとテコンドーは体の使い方も異なる。
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「バイアスロンはスキーと射撃を組み合わせたスポーツなのでメンタル的に安定して的を狙うことは得意だったんですが、テコンドーは相手が動いているし、自分のタイミングで蹴ることができないので、相手との駆け引きが一番難しい」
競技者として4年というブランクも体に変化があった。体力的な衰えはある意味当然だが、当時は貧血があり、「一人だけ高地トレーニングをしているような半端ない疲労感があった」という。それでも体が少しずつ戻ってくると、2018年のアジア選手権、2019年の世界選手権で銅メダルを獲得。初めてポイントを獲得して勝利することができたことで、「少し自信がついてきた」と明かした。
いよいよ目前に控えた東京パラリンピックの舞台。自身4度目となるパラリンピックに「みんなで楽しめる大会になればいい」と語る。
「昨年はコロナ禍で大変な状況でしたけど、この苦難をみんなで乗り越えて、東京大会は明るいニュース、希望になると思うので、ぜひみんなが楽しめる大会になればいいなと思っています。私自身も今までやってきたことを皆さんの前で披露できることがとても楽しみなので、応援してくれる方々と一緒に喜びを分かちあえる大会にしたい」
そのうえで、伝えたい思いもある。
「自分と同じように障がいを持つお子さんにぜひ、パラスポーツを見ていただきたい。そして、世界で活躍できる機会や場所があることを知ってもらいたい」
東京で開催されるパラリンピックはゴールではない。パラスポーツの普及のために、そしてみんなが住みやすい、生活しやすい暮らしづくりのために、競技と仕事の両面で伝えていきたい。
(THE ANSWER編集部)