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ドイツ人元Jリーグ監督が“部活”に抱いた違和感「練習が休みと言ったら全員喜ぶ」

サッカーを義務と感じたら「先生がいなくなった途端に辞めちゃう」

 実際にエンゲルスが、翌日練習がオフだと告げると、生徒たちから一斉に大歓声が沸き上がった。

「プロになれる選手なんて全体の1%。残りの99%の子供たちにとって、一番大切なのはサッカーを楽しむことじゃないか。僕はみんなに、サッカーを生涯の遊びにして欲しかった。そうすれば彼らの子供たちもサッカーを楽しむ。そういう種を蒔いていかなければ、サッカーは広まっていかない。サッカーを義務だと感じていたんじゃ、先生がいなくなった途端に辞めちゃうよ」

 さらにエンゲルスは熱弁を続けた。

「トレーニングをして試合に勝つのも結果だけど、サッカーを好きになってもらうのも大切な結果だよ。僕は80人の部員全員を、しっかりと見たかった。プロになれる可能性のある子と同じように他の子も助けたかった」

 結果的にサッカーを楽しんだ滝川二高からはその後、波戸康広(元横浜F・マリノスほか)や加地亮(元ガンバ大阪ほか)、岡崎慎司(レスター)、金崎夢生(鹿島アントラーズ)ら次々にプロの選手も育っていった。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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