シンプルだから難しい話題のパラ競技・ボッチャ ボール選びに込められた個性と意志
使ったボールの数は「とにかくいっぱい」「愛着も沸いてきますよね」
日々の練習は、ボールの特性を掴みながら、試合で使うボールを選定する場でもある。ボールにとっては、まるで試合に出場するレギュラー争い。「実際、そうなんですよ」と、杉村は笑顔で話す。
「本当にそんな感じで練習しています。『このボールは使えるぞ』なんて思いながら。試合で使うのは赤6球、青6球、白1球の1セット13球なんですけど、大会に行く時は常に3セット分くらい持っていって、試合環境だったり、対戦相手だったりによって、ボールを入れ替えて戦っています。これまで使ったボールは、とにかくいっぱいあると思いますね」
今でも使っているボールの中には、パラリンピック初出場にして主将を務めた2012年ロンドン大会で7位に入った時に使ったものもある。「自分の感触にすごく合っている。今もずっと使っています」。銀メダルを獲得した2016年リオ大会に向けては日本で開発されたボールもあった。ともに試合を戦うパートナーに「愛着も沸いてきますよね」と笑う。
ボッチャでは、選手は自分がボールを投げるプレーヤーであると同時に、状況や戦略に応じたベストメンバーを決める監督でもある。杉村はボッチャが持つ別の魅力について「自己選択と自己決定ができるスポーツ」だともいう。
「自分の日常生活において、やっぱり1人でできることは限られていて、いろいろ援助が必要なんですけど、ボッチャのコート上では自分の意志で動けますし、やりたいことを表現できるんです」
それぞれ個性の違うボールたちの中から何を選び、どう使うのか。目標に向かっていかにボールを近付けられるか、というシンプルなスポーツではあるが、その一投一投には選手の個性と意志が凝縮された奥深さがある。
入口は広く、探究の道は長い。ユニバーサルスポーツとして、生涯スポーツとして、幅広い層の興味を呼ぶのは自然の流れなのかもしれない。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)