消えない差別的言動 「審判擁護」とは違う、埼玉県サッカーの「ノー文句」の狙い
サッカー界の難題改善へ…埼玉県サッカー協会は「フェアプレー日本一を目指します」
県協会は4月、HPへの掲載と並行して「試合中 文句を言わない!」と書かれたバナーを300枚作製。小学生年代の4種から社会人や大学生の1種まで、傘下の4つの種別委員会に配布して県協会主催の大会会場に掲出することで、選手や指導者、審判員のほか応援する保護者にもスローガンの理解を促した。
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この行動規範は「審判擁護」と誤解されがちだが全く違う。審判の技術向上も目的の一つで、さらに審判への不要な異議によって無駄に消費される時間をなくし、試合環境の改善につなげる狙いもある。
モラルやフェアプレーというのは抽象論で語られることが多いが、横山会長は「スポーツにはマナーやエチケットなど教育的要素が多い」とし、「例えば選手交代の時、ゆっくり歩いて時間稼ぎをするのはモラルに反する。これをなくすだけでも、日本のサッカーはモラルが高いと世界に発信できるわけです」と述べる。
横山会長は2006年6月、県サッカー協会専務理事に就任した折、「規律・フェアプレー委員会」という専門委員会の名称を「フェアプレー・規律委員会」へ変更。試合会場では「埼玉県サッカー協会は、フェアプレー日本一を目指します」とアナウンスし、大会プログラムにはこの文言とともにルールを遵守し、審判と相手選手を尊重して戦うことがフェアプレーだと訴えてきた。
来年はバナーの配布枚数を増やし、縦書きも作成する計画のほか、スポーツモラルに関する表彰も考えているそうだ。
「周りが反対することばかりやってきた」と苦笑する横山会長のもと、埼玉県協会がサッカー界の難題改善へ先鞭をつけた。
(河野 正 / Tadashi Kawano)