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トップリーグ展望【後編】タレント軍団・神戸製鋼、パナソニックが激突…ホワイトカンファレンス

ヤマハ発動機の五郎丸歩【写真:Getty Images】
ヤマハ発動機の五郎丸歩【写真:Getty Images】

ラストイヤーの五郎丸を擁すヤマハ発動機、キヤノン、リコーも上位入り目指す

 この2チームの背後に着けるのがヤマハ発動機ジュビロ。選手の大きな出入りはないが、伝統の強力スクラムは、日本代表を指導した長谷川慎コーチが昨季から復帰して威力を増している。注目したいのは、2019年シーズンにHCから昇格した堀川隆延監督の目指すラグビースタイルだ。

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 伝統的な“ヤマハスタイル”は、スクラムなどのセットプレーを起点に、FB五郎丸歩のロングキックで陣地を稼ぎ、敵陣でPKを得れば着実3点を刻むオーソドックスなラグビーだった。だが、堀川監督が「昨季から日本で一番ボールが大きく、速く動くラグビーを目指している。昨年以上にプレースピードのところにこだわりを持ってやってきた」と語るように、新たな挑戦に取り組んできた。

 同監督が日本代表の若手や候補選手を集めた「ナショナルディベロップメントスコッド」のコーチを務めた際に、代表を率いるジェイミー・ジョセフHCのラグビースタイルを吸収。キックを積極的に使いアンストラクチャーな状況からトライを狙う戦術などをヤマハに落とし込み、課題だった得点力アップを目指している。実際に、中断された昨季TLでは総得点で神戸製鋼に次ぐリーグ2位(総失点3位)につけるなど、データにもチームが目指す新しいスタイルが表れている。同時に、ファンにとっては、すでに今季限りでの現役引退を表明している五郎丸の最後のシーズンという見逃せないポイントもある。

 上位と目される3チームの足元をすくう可能性を秘めているのがキヤノン、リコーの2チームだろう。攻守とも昨季よりもシンプルなラグビーをめざすリコーは、今月5日に行われたサントリーとの練習試合でも、個々のコンタクトでは互角の戦いを見せて、相手の強みのスピードと展開力をスローダウンさせる場面が目立った。練習試合が行われた5日の時点では、リコーはコロナ感染者0の数少ないチーム。神鳥裕之監督も「感染の影響なく、強化をプラン通り進めることが出来たことも、仕上がりの良さに繋がっている」と、開幕への準備には自信を見せる。

 このサントリー戦では、3トライ中2本をラインアウトからのドライビングモールで奪っている。BKがボールを展開してマークしたのは1本に終わったが、ラインがしっかりと前に出るアタックを見せた場面では、グラウンドを広く使ったいい攻撃を見せている。ライン攻撃の精度を上げれば、上位戦線も見えてくるはずだ。

 キヤノンは神戸製鋼からLO安井龍太、NTTコムからSO小倉順平、サントリーから7人制代表のWTB松井千士と、上位チームからレギュラークラスのメンバーを補強。4シーズン目のSO田村優主将、2シーズン目のSH田中史朗も含めた移籍組を軸にしたメンバーを、どうワンチームに仕上げるかが注目されるが、昨年就任した元サントリーの沢木敬介監督は「今はニュージーランドのシステムがどのチームも主流になっているが、僕らは自分たちのオリジナルを持ったシステムでボールの動かし方にチャレンジしていきたい」と独自のスタイルにこだわる。

 田村主将も「まだ一貫性はない」と指摘する発展途上のチームではあるが、同監督は「選手に言っているのは、いいパフォーマンスをしたいなら、いままでと同じ取り組でそれを望んでも無理だから、取り組む姿勢を変えようと話している」と選手に行動変容を求めてきた。この意識改革が、どうプレーに反映されるかも、順位争いに直結しそうだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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