コロナ禍の新しいスポーツ指導 元日本代表・渡邉拓馬氏の“ロボットバスケ教室”とは
アバターを介して様々なアドバイス
最初は変則鬼ごっこによるウォーミングアップ。ボールを持たない鬼が、ドリブルしながら逃げる子を追いかけるものだ。ただし、ともに移動できるのはコート内に書かれたラインの上だけ。鬼は1人だけではないので、逃げる子も広い視野を持ちながらドリブルをして移動しなければならない。「残り1分!」「あと10秒!」。都内のパソコン画面を通じて見守る渡邉氏。カメラはコートを見渡せるほど視野が広く設定され、時折体育館を動きながら声をかけた。
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続いて中間発表の時間。子どもたちはこれまでの遠隔指導で出した課題を入れたメニューにチャレンジした。フリースローを打ち、入ったかどうかにかかわらずリバウンドをキャッチする。続けてフックシュートを放ち、再びリバウンド。最後はバックシュートと打つ。終わったらフリースローラインに戻って初めから繰り返す。40秒間でできるだけ多くの回数をこなしていく。次々とネットを揺らす姿を見た渡邉氏は「OK! ありがとう!」と拍手で応えた。
次は状況判断を養う練習。フリースローライン上に1メートル間隔で2つのコーンを設置し、2人がオフェンスとディフェンスに分かれる。コーンを挟み、オフェンスはリングを背にしたディフェンスと対面。ボールを受け取った瞬間、ディフェンスがコーンの右か左に移動してチェックをかける。オフェンスは相手の動きの逆をついてドリブルを始め、レイアップシュートまで持って行く。相手がコーンの間に立ってブロックに来た場合はその場でシュートだ。
相手を見て瞬時に動かなければならない。渡邉氏は、アバターを通じて現地のスタッフに練習方法を伝授。子どもたちが慣れてくると、レイアップではなくジャンプシュートに変えて練習のバリエーションを増やした。「ディフェンスはフェイクを入れてもいいからね」。対戦形式のメニューで盛り上がると、子どもたちだけでなく、見守る保護者からも笑い声が響いた。
「シュートで両手を使えるようにするのも当たり前だけど、足も両方使えるようにしていきましょう。課題でわからないことがあったら(遠隔指導ツールを使って)これからコメントしてきてくださいね」
助言を送りながら、小まめに水分補給の時間をとって練習。渡邉氏もアバターの操作に慣れてきた。練習を終えると、今度は質問タイム。恥ずかしそうな子どもたちに代わって現地のスタッフが「声を出すにはどうしたらいいですか」と問いかけた。渡邉氏は「仲間同士で試合中に声が出ていればいいと思います。バスケットに限らず、普段からみんなで遊べば自然と声が出るんじゃないかな。どんどん遊んだらいいと思う」とアドバイスした。
「川南ドルフィンズ」はコロナ禍もあり、昨年は4月から4か月間の活動自粛を強いられた。子どもたちは外で遊ぶこともできず、バスケットボールへの思いを募らせる日々。活動再開後も3密を避けるため、男女別のスケジュールで練習を実施するなど工夫してきた。