“不変の男”家長昭博が感じた「変化の年」 コロナ禍で考えた「残りの現役生活」とは
経験を重ねた家長が感じた「興奮度、達成度」の変化
家長は04年にG大阪でプロデビューを飾り、翌年には自身初のJ1優勝を経験した。スペインや韓国、そして大宮でのプレーを経て、17年に川崎Fに移籍。初年度で自身2度目のJ1優勝、翌年の18年には連覇を達成し、自身も初めてのJリーグ最優秀選手賞(MVP)に輝いた。今回のJ1優勝は、家長にとって4度目。しかし、「優勝するたびに喜びが増えていくのかなって思っていたんですけど、そんなに増えていかなくて。優勝しても、そんなに満足できなくなってきた」。それが、優勝に対する家長の素直な感情だった。
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「うれしくて喜びも爆発したんですけど、寝て起きると、また自分の日常が始まるというか。みんなそうだと思うけど、変わらない朝を迎えて、練習が始まる。だから優勝した直後のインタビューでも言ったけど、『今日が終わらなければいいのになあ』って思って。でも明日が来て、やっぱり普通の日常だったんです。優勝しても、そんな感じなのかなって」
どんなに経験を重ねても、家長は変わらない。「自分でも思うけど、変わっていない。年だけ取っていく」らしい。では、サッカーへの向き合い方はどうなのだろうか?
その答えも、やはり「変わっていないかもしれないですね」という。サッカーのために生活し、それがすべてだと信じて、今もなお取り組み続けている。「でも……」と一瞬考えて出てきた言葉は、意外にも自分のなかで感じた変化だった。
「1試合で感じることとか、興奮度とか、達成感とかは変わってきたかな。いろいろな経験をしていくなかで、物の感じ方や素直な受け取り方は変わってきたかもしれないですね」
サッカーへの向き合い方は変わらない。でも、感じ方は変わってきた。重ねた経験の分だけ、濃く、深く感じるようになったのかもしれない。「そうなると思ったんですけど、意外に何も感じなくなってきた」。そう言いながら、家長自身も少し不思議がった。
何かを手にした瞬間、それが日常になる。そうやって家長は、一つひとつ階段を上がってきたのかもしれない。