八村塁、ルーキーイヤーの本当の評価 他チームベテランの声「過小評価されている」
3Pシュートの改善がさらなる成長を後押し
課題に挙げていた3ポイントシュートは自粛期間中に、より曲線的な軌道で放つように練習を積んだという。そんな中、11日の強豪バックス戦は収穫の多い試合だった。シーズン再開後の序盤戦では打つのをためらう場面も多く見られたが、11日の試合では「キャリアで一番多いと思う」という9本の3ポイントシュートを放った。成功は3本だったが、リズムよく積極的に打てたのは収穫。八村も試合後、「コーチからも3ポイントを打っていけば僕のやりたいスペースがもっと出てくると言われていた。相手が警戒すれば自分はドリブルもできるし、(他のプレーが)生きてくる」と手応えを感じ取っていた。
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来季、ビールとジョン・ウォールという2枚看板が戻れば、八村への負担は減り、プレーしやすくもなるだろう。「3ポイントを打つタイプではないけれど、チーム状況や今のNBAの流れとしては打てないと生き残れない。ジョンやブラッドが帰ってきたらオープンスペースが出てくると思うので、もっと決められるようになりたい」と八村。3ポイントシュートを打つことでスペースが生まれ、自分の攻撃の幅を広げる助けにもなる。守備とともに、3ポイントシュートの改善がさらなる飛躍のために重要な要素となりそうだ。
日本人初のドラフト1巡目指名で入団した八村の1年目は、新型コロナウイルス感染拡大によるシーズン中断があり、その間には人種差別問題で全米で抗議運動が起きるなど、激動だった。試合中の不運なけがによる約1か月半の離脱はあったものの、出場した試合全てに先発出場し、主力として活躍。日本からはもちろん、地元メディアからも大きな関心を集める中、八村は終始落ち着いていて、やるべきことに集中できているように見えた。
ブルックス監督が「彼を誇りに思う。バスケットボールIQが高く、集中力も抜群。成長を見ることができたし、前向きな要素が多かった」と振り返れば、チームメートのイシュ・スミスも「得点機会を作り出す能力があり、シュートを決めきることもできる。優れた要素をいくつも持っている」と称賛。周囲は22歳の才能と伸びしろに大きな可能性を感じ取った。何より、将来のチームに不可欠な存在であることを証明できただけでも、ルーキーイヤーは十分に成功だったと言えるのではないだろうか。
フロリダ州での約1か月に及んだ隔離生活を終えた八村は、本拠地のワシントンDCに戻ってから一番にやりたいことを聞かれ、次のように答えた。
「日本食も食べたいし、まずはゆっくりしたい」
通常のルーキーが経験するよりも長くて、はるかに濃密だった八村の1年目は将来への期待感を抱かせて、幕を閉じた。
(岡田 弘太郎 / Kotaro Okada)