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「才能が伸びる人と伸びない人の差」 ハンド宮崎大輔×BMX内野洋平の「No.1の哲学」

ハンドボールの第一人者として知られる宮崎大輔【写真:ベンヌ提供】
ハンドボールの第一人者として知られる宮崎大輔【写真:ベンヌ提供】

宮崎が大切にしている「99%の努力と1%のひらめき」の哲学

――2人とも競技ではベテラン。若い選手を見たり、子供を指導したり、いろんな機会があると思いますが、才能が伸びる人と伸びない人の差はあるんでしょうか?

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宮崎「もちろん、環境や運にも左右されるけど、僕が大切に思っているのは『99%の努力と1%のひらめき』。ひらめきが強い方がいいけど、ひらめきの1%がない限り、99%の努力は無駄になると僕は思う。だからこそ、自分の考えと目標を持って、そこに向かって努力すること。やっぱり無目的にやっているだけじゃダメで、一つの練習も理解して、自分なりに考えてやらないと。

 そうしないと、さっきウッチーが言ったようにだらだら練習が回るだけで進まない、覚えない。ダイエットしたいと言っている人も何かでスイッチが入って、自分から走りに行けば苦じゃない。スポーツも親から『あんた、やりなさい』と言われた瞬間にやらされている感じが生まれてしまい、意欲が生まれない。自分から進んでいく素直さが大切かな。ウッチーはどう思う?」

内野「まさにそう。僕が熱心に『やりなさい、やりなさい』と教えても、それは僕のレベルまでは行くかもしれないけど、僕を超えることはできない。やっぱり、僕を超える存在を作らないと。僕もまだ現役なので、僕を超える存在を作らないと、僕自身が伸びないと思っている。結局は自分が伸びることが一番なんだけど、それが業界のためになるから。今、高校生と中学生の弟子が2人いて、中学生の子はキッズの中で埋もれていたけど、ここ4年くらいで伸びて、今は世界で5本の指に入るくらいになったんです。

 育て方は、技のやり方は一切教えない。聞いてきたら、その課題を一緒に考える。なぜその技をやりたいのか、何をカッコいいと思うのか。練習以外も一緒にいて、どんな考えを持っているか見ていく。そういう環境を作ったら、一気に伸びて行った。だから、僕は押し付けることは絶対しない。子供なので、練習中に意識がほかに向いた時は注意するけど、何をしろという押しつけは一切ない。好きな時に乗って好きな時に乗らなくていい。僕は一歩下がって見るスタンスの方が僕を超える存在はできるかな」

宮崎「ウッチーは世界1位で上がいないからこそ、その立ち位置を保つのが凄く難しいよね」

内野「世界にライバルが3、4人いたんですよ。彼らとずっと戦ってきたけど、2016年くらいにもう眼中になくなった。全然意識しなくなり、彼らのフェイスブック、インスタグラムの映像も見なくなり、BMXの世界中のヤツらの技の動きを追わなくなって『俺、まずいな』と思った時があった。でも、彼らはもう選手として出来上がっているから『もっと頑張れ』なんて言えない。そうなった時に自分でキッズを育てることにした。ライバルがいなくなったから、自分を追い詰めるヤツを作った方が早いと思って」

宮崎「はあ。それは凄いね」

内野「そうしたら見事に今、押され気味です(笑)」

宮崎「それは大変だ(笑)。でも、やっぱり何か持ってる子なんだね」

内野「彼はヤバイですよ。僕の種目がオリンピック競技になっても、彼は来るでしょうね」

宮崎「俺もウッチーと同じように考えたのは27歳でスペインに挑戦した時。日本にいても物足りず、もうマンネリで。選手である以上、教えられたいのに教えるような立場になっていた。これは絶対ダメだと思って海外出ようと。自分にチャレンジするものを作らないといけないよね。でも、そこで自分で環境を作るのは凄い。教えるっていう。実際、4年でそこまで来たわけでしょ?」

内野「自分もその選択をしたのは意外でしたね。それまで子供を教えたこともなく、教えること自体も興味なかったので。引退した人が教えていたし、僕の役割はリザルトを残したり、BMXを世の中に発信したりと思っていた。でも、そんな状況になってしまった時、モチベーションが下がった。『あかん、このままだったら辞めてまう』と思ったので、化け物を生むという方向に考えた」

宮崎「じゃあ、これからは自分の成長も考えながら、教えなきゃいけないわけだ」

内野「でも、本当に化け物になったので。世界中から注目される若手になって、そうしたら僕の周りにキッズが増えた。全国のキッズのライダーたちが『教え方が凄くて、ああなった』といっぱい来て。教え方自体は放任なので、勘違いだけど……(笑)」

宮崎「教えていた子がそこまで伸びるというのは、自分でも気づかない上手いヒントを与えているんじゃない?」

内野「何でしょうね。自分では分からない部分はあるけど、兄弟みたいな関係ですよね。LINEもするし、ゲームも一緒にするし」

宮崎「でも、まだ未成年だから。お酒が飲めるようになったら楽しそうだね」

内野「いやあ、お酒を飲んだら僕のダメなところが出てしまいそうで怖いですよ(笑)」

(後編へ続く)

■宮崎 大輔(みやざき・だいすけ)

 1981年6月6日生まれ、大分県出身。小3からハンドボールを始め、高校は名門・大分電波に進学。インターハイで2度、全国高校選抜で1度、大会得点王となった。日体大大学在学中にスペインに2年間留学し、後に中退した。07年に大崎電気入り。09年は日本人男子初のスペイン1部CBアルコベンダスと契約。目標に掲げたシーズン100得点をクリアし、翌年に大崎電気に復帰。17年には前人未踏の日本リーグフィールドゴール歴代1位(915得点)に到達。19年限りで退団し、日体大に3年生として再入学。世界選手権に3度出場するなど、日本代表でも長く活躍している。

■内野 洋平(うちの・ようへい)

 1982年9月12日生まれ、兵庫県出身。幼少期は水泳、モーグルで活躍。御影工高2年からBMXを始め、05年に史上最年少の22歳で日本選手権優勝。08年に世界選手権初優勝。12年から2年連続で世界年間グランドチャンピオン。12年はWORLD TEAM G-SHOCKアスリートとして日本人BMX選手で初めてG-SHOCK社と契約するなど、数々のスポンサー契約を結ぶ。ユニクロのCM、ファッション誌など多方面でも活躍。ストリートスポーツの世界大会「ARK LEAGUE」ではオーガナイザーを務め、大会プロデュースにも尽力している。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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