「才能が伸びる人と伸びない人の差」 ハンド宮崎大輔×BMX内野洋平の「No.1の哲学」
「努力」が似合わない内野の本音「練習量は世界で見ても3本の指に入る」
――ジャンルが異なる競技ですが、宮崎さんは内野さんからどんな刺激を受けましたか?
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宮崎「ウッチーを見ていると、どこで努力しているかわからないし、『努力』という字が似合わない。でも、本当は絶対やっているだろうし、いろいろな選手を観察しているだろうし。俺もウッチーみたいにセンスのある感じでやってみたいけど、隠れてやっておいて、表では最初はわざと失敗する。それで2、3回やったらできちゃった、みたいにして“センスある人”を演じているタイプだから(笑)。どこでどうやっているのか、本音が知りたい。BMXは筋トレとかフットワークとか、あまり練習しないでしょ?」
内野「やらないですね」
宮崎「乗ってみた感覚なのか。他の選手を見てみて『ああ、俺だったらここを伸ばせる』とセンスでとらえているのかはどう?」
内野「基本的なスタンスは、練習あるのみなんですよね。僕も体力をつけようとした時期がある。走ったし、自炊もした。3分間の競技で後半が持たないので、体力つけようと。でも、結局はライディングの力を抜く意識をもってできるようになったら、それが直った。体力と言っても、僕はライダーの中では練習量は世界で見ても3本の指に入るくらい多いので」
宮崎「だいたい、どのくらいやっているの?」
内野「7、8時間くらいです」
宮崎「ええー! 俺ら夏合宿でも多くて6時間だよ、午前、午後合わせても」
内野「7、8時間やってますよ、それを週6、7日。もちろん、疲れたら休むけど。だから、練習あるのみで、その中で後半がバテたら体力をつけようというより、もっといい自転車に乗ろうとか方法はある。特に(回転する)遠心力が重要な競技なので、筋肉をつけすぎて下手になる人を何人も見た。トップライダーでも落ちて行った人もいますよ」
宮崎「ウッチーにしかできない技あるでしょ。そういうひらめきはどこから来るの?」
内野「それに関しては結構考えているけど、周りの環境ですね。周りにいる仲間がBMXの人だけなのか。それともいろんなファッション、音楽、他競技の選手だったり、テレビ局の人だったり。いろんな職種に仲の良い人が周りにいて過ごすことじゃないかな。だから、自分が教えている後輩も、そういう環境に置けるように教えていく。他ジャンルで、例えばブレイクダンサーだったり、スケートボーダーだったり、そういう人たちをリスペクトして友達になって、ということはよく言いますね」
宮崎「それは大切だね」
内野「そのひらめきがあるかないかで、スキルがそんなに変わらないヤツが世界1位と世界100位くらいの差になるんです。ハンドボールなら同じジャンプ力、シュート力があっても、世界No.1と言われる人はゲームの中で相手のかわし方、試合の組み立て方が分かるみたいな感じじゃないですか? そういうことがざらにあります。だから、後輩には『スキルだけ磨いても世界一になれないよ』と言うし、かといって『凄く切れる頭とセンスがあってもスキルがなければ世界一になれないよ』とも言う」
宮崎「ハンドボールでも感じることはあるね。今、大学で練習をやっていて、大学生を見ると分かりやすい。まず、練習の人数が多くて、プロなら20人だけど、50人を超す。でも、大学は教育の一環でもあるから。プロになりたい人もいれば、体育の教員になりたい人もいる。ただ、その中で思うのは練習をやらされてるか、自らやっているかがすごく分かれるし、違いがよくわかる。
例えば、スキルトレーニングの場合、やらされている選手は何も覚えていなくて、実戦でその場面が来たら自分が考えて応用しないといけないけど、考えていないからうまくいかない。でも、自らやっている選手はそういう練習の何が良かったか、良くなかったかをよく分析している。そこが大学生でもやっていて違いを感じる。何か問いかけても答えも返ってこない選手もいるから」
内野「凄く大切な話ですね。僕も子供に教えているけど、自分の番を待っている間にゲームの話をしていることがある。その時は怒る。まずは考えながら乗って、待っている間に今は何が良くなかったかを考えて、また次をやる。できないことは必ず原因がある。それを考えて、試して乗って、ダメだったら『ああ、違うな。なぜなんだろう』と自ら考えるようになると上達が早い。
ここでゲームの話をしてしまうと、練習がどんどん流れ作業になってしまう。パフォーマンスがダメなのに、一度やったら戻ってきて、友達と楽しい話をして……という変な癖がつく。ゲームの話をしたいなら、休ませた方がいい。一回休んで休憩して、存分にゲームの話をして。自転車に乗るのであれば、ゲームの話はしない方がいいから。そのオンオフだけはちゃんとしてます」