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【今、伝えたいこと】グランプリ通算7勝 稀代の勝負師、池添謙一40歳の誓い「夢で終わるわけにはいかない」

これからの目標は夢に終わった「凱旋門賞挑戦」

 華やかな舞台が似合う男だ。通算1208勝のうち、G1で26勝。数々の名馬にまたがりビッグタイトルを手にしてきた、もっとも印象深いのはやはり日本ダービーの勝利だという。2011年、激しい雨がたたきつける中、不良馬場のターフをオルフェーヴルとともに駆け抜けた。

「三冠、特にダービーというレースは誰もが目指している。やっぱり日本で1番大きなレースですし、勝てたことは嬉しかった。ダービージョッキーというのは特別な称号です。ダービーを勝ったから技術が上がるわけじゃない。ですが得た自信はものすごいものがあった。これは一生の財産です」

 オルフェーヴルでは皐月賞、菊花賞も制して史上7頭目の牡馬クラシック三冠を達成。池添にはダービージョッキーだけでなく、“三冠ジョッキー”という勲章も加わった。30歳で掴んだ栄冠は、自身をまた一つ上のステージへと押し上げてくれたと確信している。

 一方で、騎手人生で最も苦い記憶もオルフェーヴルとともにあるのだから皮肉だ。稀代の個性派としても知られた愛馬が日本国内で走った全17戦の手綱をとり、引退レースの有馬記念までG1を6勝。だが、2度挑戦した凱旋門賞などフランスでの4戦、その背にいたのは池添ではなかった。現地のトップジョッキー、クリストフ・スミヨンに乗り替わったのだ。

「凱旋門賞に乗れなかったのは今でも悔しい。悔しい思いというのは、どうしても忘れられません。あのレースに乗るのが、今の自分の目標になっている。今度は任せてもらえるようにって。またあそこに挑戦できるような馬に巡り合えるように頑張っていくことです。

 夢で終わるわけにはいかない。一度は手が届きそうだった場所だけに目指してしまいます。誰しもが認める世界最高のレース。まずは乗ってみたいなあ」

 来月41歳を迎える。ベテランと呼ばれる域に入ってきたが、少年のように目を輝かせ夢を語る姿は実に若々しい。

 実際に「体力面とかではあまり、衰えたなとは感じない」と言い、さらに「レースに関してはまだまだ上手くなると思っている。競馬は100頭いたら、100通りの乗り方がある。正解はない。キャリアを積めば、その分引き出しが増えていく。だからうまくなっている実感があるんです」と未だ進化の過程にあると断言する。

 夢への道を歩むためにも、今は目の前の1鞍1鞍に全力を注ぐ。「たくさんファンの方にとっては週末に競馬を見るのを楽しみにしてもらっている。その中で競馬をやらせてもらうのはありがたいこと。もう少し、みんなで頑張って乗り越えていきましょう」と呼びかけた。いつかまた、大歓声の中を先頭で駆け抜ける日を信じて――。

(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)

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